森林ジャーナリストの裏ブログ

表ブログに書けない、書く必要もないドーデモ話をつらつらと。

林業から見た地図

2006-03-17 22:59:10 | 森林モノローグ

紀伊半島の地図があったら見てもらいたいのだが、半島の先近く、奈良県と三重県の間に挟まったところに「北山村」という土地がある。ここは和歌山県。全国で唯一の飛び地自治体だ。

その北側に下北山村、上北山村がある。こちらはどちらも奈良県。

以前から気になっていたのだが、なぜこれらの地名は、「北山」なのだろうか。
都(奈良・京都)から見れば、南の山である。現在、北山と言えば、京都北部を指すのが一般的だろう。磨き丸太の北山林業も有名だ。

どうやら、見方が誤っているようである。
北山村の南には、本宮町(現・田辺市)、新宮市がある。こちらから見ると、北の山なのだ。そして、これらの地域を貫くのが、熊野川の支流に当たる北山川。
山から伐られた木は、この川沿いに新宮に流された。そして、港から出荷された。

ここで林業の流通から見た地図が出来上がる。
新宮から見たら北なのだ。

おそらく、同じような地名の配置は、全国各地にあるはずだ。木材は国の重要な資源であり、木材を握るものが国や地域を動かす時代もあったに違いない。
事実、ほんの数十年前、林業資本が日本を席巻したこともあった。明治日本の基盤を作った資本も、林業が生み出していた部分がある。

北山村は、自治体合併の声もあり、その際に奈良県か三重県に編入の話もあったようだ。しかし、選んだのはやはり和歌山県。新宮市との結びつきは、今も切れないようである。

都を中心とした史観ばかりにとらわれないようにしたい。

 


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2 コメント

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Unknown (になみ)
2006-03-22 08:15:49
なんだかちょっとどきどきしました。こういう話、好きみたいです。

幼い頃は自分のいる場所が世界の中心だった。だから、電車のどちらがのぼりかわからなかった。

富士山がある方が北だったけれど、どんどん北に向かえば一周して南から帰ってくることに

なると思って不思議だった。

基点があるから方角があるんだってわかった。



基点っていろいろあって、気づかなかったものを知ると嬉しくなってしまいます。
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日本の基点 (田中淳夫)
2006-03-22 23:48:17
ちょうど「旅する巨人」を読み終えたのですが、宮本常一は、庶民の民俗を追いかけて、庶民の視点からの社会を描きました。

歴史も平地の稲作民族による歴史観から山の民に視点を移すと別の歴史が姿を現すのではないかと考えています。



日本列島のわずかな平地で国を作ったり取り合ってきた歴史とは別に、山岳地には領土ではないネットワーク型の社会が広がっていたのかもしれません。
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