私的図書館

本好き人の365日

九月の本棚 3 『大正時代の身の上相談』

2008-09-30 19:28:00 | 本と日常
同僚が歯痛で困っていました。

普段から痛みに関してとっても弱い彼は、ちょっとしたことでも大騒ぎ。

そんなに痛いなら歯医者に行けよという話ですが、それほどでもないみたい。

少し可哀想でしたが、みんなからは放っとかれました。

忙しいですし、代わってあげることもできないですしね。

どれほどの痛みなのか、正直本人以外にはわかりません。

もちろん、本人にとっては重大な問題です。
もしかしたら、政治の空白やガソリンの値上げ、サブプライム問題なんかより重大かも知れません。

痛みや悩みの重さって、実際本人にしかわからないことですし、他人と比べることのできない問題ですからね。

さて、今回ご紹介するのは、大正三年から十一年までの間に読売新聞に掲載された身の上相談の記事をまとめた本。

*(キラキラ)*『大正時代の身の上相談』*(キラキラ)*という本です☆

「接吻されて汚れた私」

「太り過ぎて人前に出たくない」

「頭の中は女の子のことばかり」

「ミカンを二十個一度に食べる夫」

タイトルを見ただけで何だか可笑しい☆

いやいや、本人はいたって真面目に相談しているのだから、笑ってはいけません。

大正時代を感じさせる相談も多数あります。

十八歳になる少女からの相談は、裁縫が苦手で手を抜いてきたので、この年になっても自分の着物ひとつ作れない。
婚期も迫ってきてようやくことの重大さに気付いたが、いまさら一から教えてもらうのも恥ずかしいので何か参考になる本などないでしょうか、というもの。

着物を自分で仕立てられるのが結婚の条件?
今だったら考えられないけれど、当時としては常識だったんでしょうね~

もう一つ、中学生の少年の相談は、異性のことばかり考えてしまうというもの。

この年頃ならしごく当然のような気もしますが、少年は、「私の周りには汚い虫がうじゃうじゃしていて、払っても払って身体の中に入ってくるよう、どうしたら桜の花のように美しくなることができるでしょうか」と思い悩んでいます。

これに答える担当記者のコメント。

「冷水で頭を洗い、また部屋にこもらず散歩をなさいまし」

中学生諸君、だそうですよ☆

その他にも、姉妹の契りを結んだ親友と恋人との板ばさみに悩む少女や、自分のお尻の大きいことに悩む少年、夫に収入があって女中が何でもしてくれるので何もすることがないと悩む奥様、涙もろくて優しく世事にもうとくて心の美しい妻を思わず心配する夫など、様々な相談が寄せられています。

それに対する当時の新聞の担当者のアドバイスもなかなかのもの♪

大正時代の価値観や当時の恋愛、結婚事情を知るうえでも、とても参考になる読み物です。

時代が変わっても、みんな恋愛や夫婦関係でいっぱい悩んで、みんなそれぞれに苦労しているのは同じなんだなぁ~と、何だか勇気をもらいました☆

価値観が移り変わってしまって、今では笑い話のような相談も中にはありますが、笑ってはいけませんね、本人にとっては当時は大真面目な悩みだったはずですから♪

大正時代に生きた人々が、どんなことを考え生きていたのか、ちょっとだけのぞかせてくれる一冊です。












カタログハウス  編
ちくま文庫