私的図書館

本好き人の365日

「団蔵と多見之助」

2008-09-06 23:58:00 | 本と日常
放送された、第38回NHK講談大会を見ました。

落語はたまに見ますが、講談を聞くのは久しぶり。

そんなに身を入れて聞いていたわけではありません。
落語みたいに面白可笑しくというわけでもないので、最初はちょっと退屈でした。

ところが、これがいいお話なんです!
感動しました。

演目は一龍斎貞水の「団蔵と多見之助」

芝居小屋で「仮名手本忠臣蔵」を演じる役者のお話。

旅先で世話になっている一座の興行で、判官役(赤穂藩主、浅野内匠頭に相当する役)をすることになった男。

幕も上がり、いよいよ判官が切腹する四段目が始まります。

しかし、由良之助(大石内蔵助に相当する役)を演じる団蔵は、判官が切腹する場面で、本来なら花道を渡って近づいてこなければいけないのに、いっこうに近づかず、花道の途中で平伏したまま。

判官は、仕方なく芝居を続けますが、本来なら、待ちに待った由良之助登場のシーン。
主従の別れを描く涙を誘う場面です。
それが由良之助が遠くにいるので、大声で怒鳴りあうみたいになってしまいます。

幕が下りた後、なぜ芝居を変えたのか、その理由を聞きに行きますが、芝居がヘタだと一蹴され、「お前の肩が来るなと言っているから行きたくても行けない」と言われてしまいます。

自分の芝居の何がいけないのか悩む男。

その次の日もやっぱり芝居はそこで止まってしまいました。

またしても理由は教えてもらえず、しかも団蔵に冷たく突き放された男は、いっそ団蔵を道連れに、本当に舞台の上で切腹してやろうかと思い詰めますが、何とか思いとどまり、同業の先輩に、恥を忍んで打ち明けに行くことにします。

しかし、男の芝居を見たこの人も「それじゃあ俺も近づけねえ」とひとこと。

ここで理由を教えてもいいが、それじゃあお前のためにならない。一晩考えてそれでもわからなければ、明日またおいでなさい。といわれて男は送り出されてしまいます。

最初見ていて、意地悪しないで早く教えてあげればいいのに、と私なんかは短絡的に考えてしまったのですが、そこがこのお話のキモ。

自分で苦労しないと自分のためにならない。

ここにきて、ようやくお話の面白さに気が付いて、それからはテレビに釘付け。

昔かたぎというか、職人かたぎなお話にグッときてしまいました☆

自分の演じる判官の気持になって考えてみる男。

待ちに待った由良之助が来てくれた、ああ嬉しい。ああ嬉しい。

だが嬉しいだけだろうか、その次は?

自分はこうして切腹しなければならなくなった。

後に残る家臣や国もとの領民たち…

………。

由良之助。

役者魂です!!

これでダメなら本当に腹を切る覚悟で舞台に上がる男。

その芝居に答える団蔵がこれまたいい!!

久しぶりに熱中してテレビを見てしまいました。

古典もなかなか侮れません。