わたし達の世界とソックリだけれど、魔法に満ちた別の世界。
今月は、そこで巻き起こる、魔法にまつわる様々な事件を描く「大魔法使いクレストマンシー」シリーズを紹介してきましたが、いよいよ今回で三冊目♪
映画「ハウルの動く城」も好評みたいですし、ますますこの作者からは目が離せません。
では、英国が誇るファンタジー物語の紡ぎ手。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『魔法使いはだれだ』を、ご紹介しましょう☆
今回の舞台は寄宿学校!
わたし達の世界とソックリだけれど、やっぱり違うこっちの世界では、魔法使いがたくさんいるにもかかわらず、魔法が法律で厳しく禁じられています。
「このクラスに魔法使いがいる」
そんな中、捕まったり、火あぶり(!)にされた魔法使いの遺児たちが学ぶラーウッド寄宿学校の二年Y組で、魔法使いを告発するメモが見つかって、大騒ぎ!
いったい誰がメモを書いたのか?
そして、メモの内容が本当なら、魔法使いはいったい誰?
登場する学校の生徒たちの描写がいきいきとしていて、読んでいて楽しい、楽しい♪
男子と女子の間に見えない壁があって普段は口もきかなかったり、男子は男子で暗黙の力関係が、女子は女子でいくつかの派閥がある、といったところなんか、どこの国でも共通らしいですね。
この作者の学園物って大好きなんですよ☆
いじめっ子や気取り屋、いわゆる「いい子」なんて一人もいなくて、ズルくて、目立ちたがり屋で、あこがれや嫉妬を抱く子供たちばっかり!
「そう、そう、こんな奴絶対クラスに一人はいたよね」と思わずうなずいてしまうほど☆
魔法使いと疑われ、みんなにからかわれる女の子のナン。
幼い時の魔女との出会い、火あぶりにされる魔法使いの姿が忘れられない男の子チャールズ。
そんな時、魔法としか考えられないような事件が次々と起こって、みんなの疑いの目は哀れなナンに…
やがて副校長の息子で嫌われ者のブライアントが、「魔法使いにさらわれる」と書き残して失踪してしまい、警察もやって来て騒ぎは大きくなるいっぽう。
ついには魔法使いを捕まえる査問官がやってくるというので、逃げ出したナンと仲間たちは、古くから伝わる助けを呼ぶといわれる呪文を唱えてみることに…
いい意味で期待を裏切ってくれる作者の”引っかけ”にはワクワクさせられっぱなし!
アレ、この人がこうだとすると、あれは誰がやったの?
あっちがこうだと、え? そんなのってアリ!?
疑問符と感嘆符。
交互に頭に浮かんで物語の後半はスピードアップして読んでしまいました。
この世界ではクレストマンシーのことはほとんど知られていないらしく、子供たちにうさんくさく見られてしまうのが可笑しい☆
魔法のほうきの友人って誰?
わがままな空飛ぶ絨毯?
黄金の手にスパイクシューズのチョコレートケーキ?
魔法がたっぷり、ユーモアどっさりの痛快ファンタジー小説☆
戦いばかりのファンタジーに、もううんざりのあなた。
普通の魔法ではあきたらないというあなた。
ぜひ、このシリーズを手に取ってみてはいかがでしょうか。
きっと面白いことが始まりますよ♪
どうです、魔法使いを捕まえに、あなたも物語の世界に出かけてみませんか?
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 著
野口 絵美 訳
徳間書店