私的図書館

本好き人の365日

十一月の本棚 『魔女と暮らせば』

2004-11-18 01:16:00 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

いよいよ映画「ハウルの動く城」が公開されますね♪

キムタクの声優としての評判や、ストーリー展開についての声が、早くもネットのあちこちから聞こえてきていますが、原作がとっても面白かったので、どんな映画に仕上がっているのかが今から楽しみです☆

待ちどうしいな~♪

この「ハウルの動く城」の原作者。
イギリス人の女性なのですが、彼女の他の作品もとっても面白いんです。
ひとりでも多くの人にぜひおすすめしたい!
今回はその中でもお気に入りの作品。
大魔法使いクレストマンシーが登場する一連のシリーズの中の一冊。

魔法使いに魔女に妖術師、呪術師に黒魔術師に猫に虎に火を吹くドラゴンまでが登場するドタバタ魔法大合戦。

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『魔女と暮らせば』をご紹介します☆

あなたは魔法が使えるとしたらどうします?
この本に登場する魔女の少女、グウェンドリンはツバを吐くみたいに気に入らないことがあるとすぐ魔法を使います。(ちょっとお行儀がわるいんです。おまけに口も)

そのくせ、自分は他の連中とは違うんだ、もっと大切にされて尊敬されなければならないんだ、だってこんなに魔法が使えるんだから。と、たいへんな上昇志向を持ったお嬢さん。

いつも弟のキャットを、従僕のように従えて、まるで小さな女王様みたい。

そんな姉弟が、事故で両親を亡くしたことをきっかけに、クレストマンシーと名乗る紳士のもとに引き取られることになります。

それまでアパートの二階を借りていた生活から、本物のお城で暮らすことになる二人。

広大な屋敷に執事にメイド、何人もの庭師にコックに大きなベット。

そんなあこがれていた豪華な生活が始まったというのに、当のグウェンドリンはご機嫌ななめ。
クレストマンシーに魔法を禁じられ、自分の能力を無視された彼女は、キャットの不安をよそに、自分の力を示すため、魔法で様々な嫌がらせを試みます。

スカートを蛇に変えたり、キレイな芝生をもぐらに掘り返させたり。

最初のうちは、子供らしい、いたずら程度のものなので、笑って読んでいられるのですが、グウェンドリンの野心のスケールの大きさがしだいに明らかになるにつれ、笑ってもいられない事態に…

魔法が当たり前に存在し、魔女や妖術師が普通に暮らしている世界は、作者の得意とするところ。
さらにいくつもの少しずつ違った世界がつながって存在し、その世界を行き来できるという設定も楽しい☆

背が高くてハンサムなのに、いつもボーとしているクレストマンシーに、その子供でオレンジマーマレードが大好きな太り気味のロジャーにジャネット。(もちろんみんな魔法が使える!)

様々な登場人物がいる中、グウェンドリンにいつも翻弄されている弟のキャットが一番のお気に入り☆

自分では魔法が使えないので、いつもグウェンドリンに頼っていたキャットが、ある日グウェンドリンが姿を消し、かわりにグウェンドリンにそっくりだけど、別の世界から来たと主張するジャネットという少女が現れ、城のみんなに別人だとバレないように苦戦する姿がとっても可笑しいんです☆

子ども達がみんないい子でお行儀のいいどこぞやの物語と違って、このお話に出てくる子ども達は口は悪いしけっこう意地悪、服は破くし、すぐに土やジャムでなにもかもドロドロにしてしまうのです。

いつもケンカばっかりしているそんな子ども達の姿は、現実にそこらにいる子ども達そのままで、妙に説得力があって納得できてしまいます。

それもそのはず、三人の子持ちである作者が「あんたたちがけんかばかりしてるから、お母さん、ぐあいが悪くて死んでしまうかも知れないわよ、そうなってから泣いても知らないから」と言ってベットに横になった時にこの物語が頭に浮かんできたんだとか(笑)

なんて素敵な物語を思い浮かべてくれたんでしょう。

「ハウルの動く城」も面白そうですが、ぜひ他の作品も紐解いて頂きたい!
知らずに通りすぎるには、あまりにも、もったいない気がするものですから☆

ほんとは魔法が使えるんじゃないかと疑わしいくらい、色々な物語を紡ぎ出してくれるダイアナ・ウィン・ジョーンズ。

あなたも、その魔法の扉を開けてみませんか?





ダイアナ・ウィン・ジョーンズ  著
田中 薫子  訳
徳間書店


十一月の本棚 2 『トニーノの歌う魔法』

2004-11-18 01:11:00 | ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

クレストマンシーとは、あらゆる世界の魔法の使われ方を監督する、大魔法使いの称号。
魔法をめぐる事件あるところ、つねにクレストマンシーは現れる!

さあ、「大魔法使いクレストマンシー」の活躍する今回のお話は、イタリアを舞台に、二つの呪文作りの名家に巻き起こった騒動を描く、まるでオペラのような意欲作♪

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『トニーノの歌う魔法』をご紹介します☆

まず、登場人物のほとんどが、今回は歌いまくります。
なんてったって魔法をかける方法が、「歌うこと」だっていうのだからにぎやかなこと、にぎやかなこと☆

モンターナ家とペトロッキ家という反目しあう二つの名家が、一族総出で街中でケンカする場面があるのですが、どちらも強力な魔法の呪文を唱えるために、声を合わせての大合唱。

伯父さん達のバスの低い歌声に伯母さんや若いイトコたちのソプラノが加わり、さらにテノールの高らかな歌声が力強く響き渡る。

そのだびにガラスが割れ、卵が飛び交い、炎に水にくさったキャベツなんかがあらわれる!

こんな魔法の戦い聞いたことありません☆

主人公のトニーノはモンターナ家の人間なんですが、まだ小さいのでたいした呪文は使えません。
できるといえば、家の主みたいなオス猫ベンヴェヌートの言葉が理解できることぐらい。

そんな時、二つの名家の強力な呪文のおかげで独立を保ってきたトニーノ達の暮らす小国カプローナに、不穏な空気が流れます。
なぜか呪文の力が弱まり、他国に侵略される危機が迫っていたのです。
それを防ぐには、かつて天使より送られたという〈カプローナの天使〉の歌の歌詞を見つけるしかない。

互いに呪文の力が弱まったことを相手の家のせいにする大人達にかわり、歌詞を見つけようとするトニーノの前に、大魔法使いのしかけた罠が口を開く…

天使に悪魔、鉄のグリフォンに人形劇「パンチ・アンド・ジュディ」。
おまけでロミオとジュリエットばりの恋愛模様もひっさげて、ダイアナ・ウィン・ジョーンズのあらたな世界は歌劇のような楽しい物語になっています。

「クレストマンシー!」

呼ぶとどこからでも、何をしていても現れるクレストマンシーのファッションにもご注目☆

登場人物も今回かなりの数になるのですが、みんな個性的で魅力たっぷり♪
舞台がイタリアだからなのか、全体に流れる明るい雰囲気と、リズミカルな文体でスラスラと読めてしまいました。

順番からいうと、今回のお話は、前作『魔女と暮らせば』から六ヶ月後に起こったことになっています。

主人公トニーノと、前回の主人公キャットは外伝『魔法がいっぱい』の中で共演していますので、二人の活躍がまだまだ読みたい方はそちらもおすすめです☆





ダイアナ・ウィン・ジョーンズ  著
野田 絵美  訳
徳間書店