インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

甘く切なく狂おしい恋愛小説

2014-07-17 23:56:10 | 私の作品(掌短編・エッセイ・俳句)
前回の帰国時、購入した高樹のぶ子の「甘苦(がんくう)上海」(文春文庫)を昨夜から、再読しだした。

恋愛小説の名手ならではの巧みさ、である。

主人公は上海でエステサロンを経営する紅子51歳、独身の富裕な熟女だ。
新聞記者上がりの39歳の京(けい)と現地で知り合って、ニヒルな美男から書誌学に必要な中国語の古書文献を買うお金、180万を所望される。
引き換え条件に、肉体交渉を持ち出した紅子だったが、単なる金を介してのみの体の関係のはずだったのが、予想外に深くのめり込んでいく。

上海が舞台のエキゾチックな恋愛小説。
バブルに沸き返る現地や、日本人駐在員の生態もよく書かれている。

以下は、ネットで見つけた読者評

私は昔から、高樹のぶ子の大ファン。
彼女のような熟練した恋愛小説を書けるようになるまでは、まだまだなあといつも読むたびに、拙作への軽い失意ともども感に入らされる。

作中の名言をひとつ。

「嘘も死ぬまでつき通せば、まことになる」

紅子は京に対する本心を、最後まで偽り続けた。
最期の最期までまやかしの振りを通したことで、それは本物の恋愛になった、それも狂おしく悲しすぎる、あまりにも烈しい恋愛に。

恋をしたことのある女性なら誰でも、ヒロインに重ね合わせて、胸がきゅんとなる小説です、お薦め!
コメント
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