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「竹下村誌稿」を読む 216 竹下村 76

(散歩道のケイトウ)

夕方の花の少ない散歩道に、ケイトウの赤が一際目立っていた。

明日は駿河古文書会の当番で、お寺の文書を読む。何ヶ所か、引っかかる所があって、たいてい、そういう所は読みが間違っていて、指摘を受けることになる。見切り発車で明日を迎えるが、止むを得ない。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

明治元戊辰年、王政復古となり、庶般の制度、日に革(かわ)り、列藩版籍を奉還し、府藩制となり、九月、徳川家達、駿遠二州に封ぜられ、駿府に入り、静岡県知事となり、藩政を行なう。駿遠の諸大名、皆な国替えとなり、遠州の各藩、太田資美(掛川)、田沼意尊(相良)、西尾忠篤(横須賀)、井上正直(浜松)、安房上総に転国となる。
※ 庶般(しょはん)- 世間一般。諸々。

この時、幕下の士、藩知事を戴きて駿遠両国に移住するもの多し。その内、中条金之助など二百八十戸、新番組と称す。これを本郡牧野原に移し、荒蕪地を与え開墾して、以って産に就かしむ。この原の土質、茶に適するを聞き、相率いて不毛を開き、茶樹を栽培せり。現今、本郡が茶の産地として、名を世に博せるは、ここに基因せりと云うべし。また新番組の内、水野緯(但し、金へん)十郎、児島直道の二氏、本村に来たり、八木為三郎、渡辺権次郎の両家に寄寓し、数年の後、志戸呂原に移り、専ら開墾に従事す。
※ 荒蕪地(こうぶち)- 荒れて、雑草の茂るがままになっている土地。
※ 博す(はくす)- 自分のものとする。獲得する。
※ 寄寓(きぐう)- 一時的によその家に身をよせて世話になること。


十二月、太田資美、上総芝山に国替となる。初め延享中、太田氏掛川に封せられ、永年在城せし関係より、領内その国替を惜しむ。依って、竹下、志戸呂、番生寺、嶋、牛尾、横岡の六村は、秋葉寺に至り、領主の永城を祈る。その時、神納せし初穂料の受領書あり。

  初穂料金五百疋
右、神納致し候。則ち、神前に於いて、太田備中守様、掛川御永城、御武運長久、火災鎮護の御祈祷、丹精の御札を抽(ひ)き、これを進上致し候、以上。
   辰十二月八日              秋葉寺役寮 ㊞
    掛川御領分金谷在 志戸呂村
             番生寺村
             島村
             竹下村
             牛尾村
             横岡村
             右村々御役人中  (渡辺氏記録)

※ 丹精(たんせい)- 心をこめて物事をすること。
※ 役寮(やくりょう)- 寺の運営と修行僧の指導にあたる幹部僧。


またこの時、領主より時局のため、国用の足らざる趣を以って、領内重立ちたるものに嘱して、その費(つい)えを授けしむ。これを御用金と云う。本村、八木為三郎、渡辺権次郎は、各金五拾両、杉山彦市は金弐拾五両を納付せり。(同上)
※ 重立つ(おもだつ)- 集団の中で重要な地位を占める。中心となる。
※ 嘱す(しょくす)- 頼んでまかせる。
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