goo

「阪本藤吉製茶之碑」を読み解く その1

(日差しの暖かい大代川近辺)

今日は風もなく暖かくて、裏の柿の木の上部を少し切った。

島田市伊久美出身の「阪本藤吉製茶之碑」が静岡の浅間神社の境内に建っている。出身地の伊久美にも建つというが、おそらく最近のものだろうと思う。伊久美の碑もいつか見に行く積りではいる。

碑の撮影がうまくなく、ぼやけて判読できない部分があり、手元にあった「伊久美村誌」に全文が出ていたので、参考にした。ところが何ヶ所か間違いがあって、どうしても解読がうまく出来ない。やはり、文字を写すだけでなく、読み下して、意味を理解してみないと、正しさの確認が出来ないから、間違いにも気付けない。これは古文書にも言えることで、読み下して意味が通じないと解読したことにならない。

さて、それでは読み下してみよう。

阪本藤吉製茶之碑  東京 信夫粲撰文

嗚呼(ああ)倜儻敢為の士、終身の力を竭(つく)し、一家の財を散じ、人の毀譽を顧みず。而して後、一世の業を創(はじ)め、後世に不朽たるを以ってすべし。苟(いやし)くも、かくの如く能(あた)わば、箍桶補釜の微といえども、なおその功を没せず。况んや茶葉の海外ヘ輸出をや。国家の貧富これに関りて、かかる阪本藤吉為す所、安(いずく)んぞ、伝えざるべきや。
※ 倜儻(てきとう)- 才気が衆人よりはるかにすぐれていること。
※ 敢為(かんい)- 物事を困難に屈しないでやり通すこと。敢行。
※ 毀譽(きよ)- けなすこととほめること。悪口とほめ言葉。
※ 箍桶(たがおけ)- 桶にたがをはめること。
※ 補釜(ほかま)- 釜に空いた穴を埋めること。鋳掛。


藤吉、駿河国志太郡伊久美邨(村)人、天資倜儻、事に臨み為敢す。毎々、地方製茶の不良を歎じ、弊害を除くを欲す。発明有る所久し。一日江戸に抵(あた)り、適(たまたま)宇治茶師某に逢う。その方を以って問う。大いに感ずる所有り。遂に宇治に抵(あた)り、千金を擲(なげう)ち、男女数十人を傭(やと)い、これを試す。その家遠近、これを聞き、笑いを以って、愚と為し、狂と為す。
※ 天資(てんし)- 生まれつきの資質。天性。

藤吉夷然、顧みず、励精益々勗(つと)める。乃ち一家の製を創り、玉露金液など佳茗陸続として成る。
※ 夷然(いぜん)- 落ちついて動じないさま。平然。
※ 励精(れいせい)- 心を励まし努力すること。精を出すこと。
※ 佳茗(かめい)- 味が良い茶。
※ 陸続(りくぞく)- 次々と連なり続くさま。


明日へ続く。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )