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お遍路仲間で色々あった一日

(内子座、破風屋根に招き狐が載っている)

今日は大洲を出て十夜ヶ橋のお寺を打ち、内子を通過し、小田川を遡ってひたすら歩き、小田のふじや旅館に投宿した。この間に、実に色々のお遍路さんに逢い、面白い出来事もあった。

順を追って書き記す。十夜ヶ橋に向かって国道を歩いていると、反対側の歩道を荷を背負ったままあたふたと駆け足で戻って来る女性遍路がいた。昨日金山出石寺であった女性だった。無事に下ってきたのだと安心すると同時に、何を急いでいるのか気になる。向こうもこちらを認めて、会釈して行ってしまった。

別格8番の十夜ヶ橋は大師が橋の下で野宿をされたいわれのある橋で、ここからお遍路は橋では大師を起こしてしまう恐れがあるから杖を突かないというタブーが生まれ、お遍路は口伝てに聞いて、皆んなどんな橋でも杖を突かないように守っている。いまその橋の上に松山自動車道が高架で通り、日本橋状態になっている。いよいよお大師さんもゆっくり休めなくなりましたね、と納経所で冗談を言う。


(「究極の野宿遍路」さんの台車、稼動中)

この十夜ヶ橋の先で、「究極の野宿遍路」さんに再開した。稼動する台車を写真に撮らせてもらった。今夜は内子あたりで野宿になるだろうと話す。ここで一昨日書けなかった「究極の野宿遍路」さんのことを書こうと思ったが、今日はまだまだ書きたいことがあるので、またまた後日である。

先を行く二人のお遍路が、自分は内子座に寄ったり、もち麦うどんという珍妙なうどんを食べたりし、二人のお遍路もばらばらに行動していたが、大瀬の休憩所でその3人が顔を合わせた。一人の方は西宮在住の人で、松山から宇和島の特急の中で逢い、会釈をした方であった。こちらは忘れていたのだが、向こうが覚えていた。

歩いて日本縦断をしたことがあるとか、お遍路と違い孤独な旅だったと話す。それで再びお遍路に戻ってきたという。あとで頂いた名刺に「チョイ悪おやじの四国へんろ 懺悔の旅」とあったので、「チョイ悪」さんと呼ぼう。明後日、自分と同じ桃李庵に泊まるという。桃李庵の主人はそば打ちが出来ると聞き、旨いらしいと聞いたので食べさせてほしいというと、一度に10人前くらい出来るので、一人では駄目だと断られ、しょげている。

もう一人の男性はその先にある分岐地点にある旅館を頼んだという。「チョイ悪」さんは前に泊まったことがあるが、最悪の旅館だとづけづけいう。色々問題のある女将さんだが、旅館が最低だとは初めて聞く。今からキャンセルしようかというのを、何事も修行だからと言って泊まるように勧めた。だから「宿修行」さんと呼ぶ。キャンセルを勧めてしまえば、女将さんがやっていることと同じことになる。

その代わり、明後日、桃李庵に泊まって手打ちそばを食べようと提案する。何とか自分が交渉してみる。実は使わないつもりであったが、自分には切り札がある。まず「宿修行」さんを加えて客を3人に増やす。それでも駄目というなら、礼状の中に書かれていた、この次見えられるときには手打ちそばをご馳走しますという、社交辞令なのだろうが、その言葉を出そう。

さっそく桃李庵主人に交渉した。渋っていたが、礼状の言葉をほのめかすと案の定、引き受けてくれた。後で明日のコースの情報に着いてお電話を頂いた。それで、無理を言って悪かったと謝った。それはもう引き受けたことだからいいと言ってくれた。それでも余らせてはもったいないので、もう一人「マメ名人」さんに電話を掛け話した。泊まったことがあるから、自分の方で連絡してくれるといい、「マメ名人」さんとは桃李庵で逢えることになりそうである。

一瞬前には面識さえも無かったお遍路が結託して、宿の主人に「うん」と言わせる、あまり無いことが起きた。まあ、こんなことがあっても楽しい。

旅館に入る数百メートルのところで、信号待ちしていると、自転車で来た高校生が自転車から下り、そばに落ちていたジェル状の栄養補給の飲み捨てた容器を拾い、自転車の荷台に載せた。えらいなあ、と発した言葉が引き金になって、彼と話した。ふじや旅館は家の近くだから案内しますと、自転車を押し始めた。

学校では野球部だけれども、高校3年だから、もう直に終わる。野球部は部員が少なくてあまり強くない。しかし、剣道は強くて県でも有数の高校だ。高校を終わったら理学療法士の専門学校に行く予定である。堅実だねえ。おじいちゃんがお遍路に行きたがっている。地の利があるのだから是非行くように勧めなさいと話し、そうこうするうちに旅館の前に着いた。久しぶりにこんなにすがすがしい若者に会ったと思った。

午後は所により雷が発生するといわれ、夕立の前に宿に入るのが今日の目標だった。しかし、色々あって、宿に入るのが4時過ぎになったが、空は持った。食事をしていると雷がなり、一雨降ったようだ。
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