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但馬コウノトリ空港

(但馬コウノトリ空港の全景)

小学生のころ「ふるさとの未来」というような題で絵を描かされたことがある。このふるさとは北兵庫の豊岡市である。

昭和30年代の初め、日本にはまだ物は無かった。しかし今日より明日、明日より明後日がより良い社会になるという、今から考えると幻想だったかもしれないが、バラ色の未来があった。「ふるさとの未来」という課題について、現代なら自然に囲まれた環境の良い街を描くところだろうが、往時の子供たちはこぞって未来都市を描いた。そこへ必ず描かれるのは空港であった。空港は往時は市民の叶わない夢でもあった。

県庁所在地(神戸)までは、日本海側から瀬戸内海側に中国山地の東端を越えて行くため、その頃は急行列車で片道4時間以上掛かった。行って帰るだけで一日仕事であった。飛行機であれば1時間足らずで行ける。

平成6年、豊岡盆地を囲む山地の南西に低山の上を平らにして空港が出来た。永年の夢が叶った訳である。

しかし過疎が進む山陰に、空港利用客があふれるはずは無かった。旅客便は伊丹空港へ1往復で、しかも利用促進のため、町の利用者には補助が出るという。一説には野菜空港だというが、生鮮食品がどれほど運ばれるかは疑問である。採算割れは必至であろう。

もっとも、維持費を町でどんなに補填しても、空港を持つというのは市民の夢なのだからと、財政的に許されれば問題は無い。夢を実現するためにはお金が掛かる。夢をさらに維持していくためには、さらに継続的にお金が掛かる。夢は夢のままで良かったのかもしれない。

さて話は変るが、2009年に開港が迫っている富士山静岡空港でも採算が取れるかどうか危ぶまれている。最初計画してから随分経っている。あの頃とは事情も大きく変わってきている。

空港の話が上がったとき、行政はこぞって鹿児島空港へ視察へ行った。なるほど鹿児島空港の周りはすべて茶畑で、景色は富士山静岡空港に似ているかも知れないが、置かれている環境からすれば、但馬コウノトリ空港あたりに行って勉強して来た方がためになるのではないか。同じ轍を踏まないために。

(参考)但馬コウノトリ空港の2003年の年間旅客数は2万5千人(1日68.5人)で全国の空港で最低であるという。
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