先月に引き続き、24日から尖閣諸島に参りますが、今日はこの活動に関しての「自己矛盾」について吐露しようと思います。正確に受け止めて頂けるよう言葉を選びながら記しますが、完全なる自信はありません。ただ、このタイミングで記す事は意義ある事だと思っています。
「もし我々が中国公船によって拿捕されれば、確実に国益を損なう」
この気持ちは昨年から持ち続けていました。だから、「行く以上は絶対に拿捕されてはならない」というのが、最低限の参加資格だと思って活動に参加して来ました。
「拿捕?大げさなっ」
いえ、大袈裟ではありません。
1982年に計画された中国近海防御戦略においては、2010年までには第一列島線を掌握しなければならないところ、南沙諸島、西沙諸島は、もはや中国の存在が支配的ですが、尖閣諸島は日本の領有権主張の方が世界的な理解となっています。
しかし、この1年間、状況は日本の側に少しずつの変化を感じます。中国公船が領海侵入をしてきて主要各紙が一面トップで報じていたのが、もはやベタ記事。当たり前になってはいないでしょうか?我々の反応も鈍感になってはいないでしょうか?
特にこの1年間、在野になってからも、専門家の方々と意見交換を続けてきました。「そろそろヤバい、拿捕の段階かもしれない」という実感があります。
私は命乞いはしません。拿捕されれば即刑が執行されるでしょう。死刑も覚悟しなければなりません。覚悟しています。
しかし、これで済まされない重大な事を皆さんと考えたいのです。
拿捕、裁判、刑執行が中国の法律を根拠として行われた(おそらく物凄い短時間で措置するでしょう)となれば、中国の施政権が及んだという既成事実を作ってしまう事になるのです。つまり尖閣諸島は日本の施政権が及んでいないという世論を作る材料を中国に与えてしまうという危険があるのです。大変な国益の損失です。「長尾達バカな事やってくれたなぁ」では済まされない事です。
因みに、妻は「捕まる様な恥晒しは絶対にやめてね。本当にヤバかったら捕まる前に青酸カリ飲んで自害して!」と言って私を送り出してくれます。似非施政権が及ぶ前に、死体というモノになれという事です。
どうです?素晴らしいでしょう?
実は我々が活動する事で中国に既成事実を与えてしまっているケースは既に存在しています。
写真、映像です。
これまでにも「中国公船が、日本人の乗った漁船や海上保安庁を追い出した」と見えるような、画をとられています。一部でも切り取ってそう見えればそう見えてしまいます。これが中国国内でバラまかれ、世論が作られています。リアルタイム映像まで流されました。
一方、日本のメディアは我々の活動を殆ど報道しません。報道されたとしても、「活動家(漁船と報道してくれないのです)の乗った船が追いかけられている」という事実しか報道しません。普通なら「我国への領海侵入はけしからんっ、漁業活動の妨害をするとは何事だっ!!! 中国政府には厳重な抗議をすると共に、政府は一刻も早く尖閣諸島に公務員を常駐させるとか、漁業が円滑に出来るよう船溜まりを作るべきですよねっ」と国民に問題提起する筈ですが、その気配は全くありません。
誠に残念です。
絶対に中国公船にお尻を見せない事。直角、或いは進行方向が逆という状態を維持する事。など対応措置は綿密に打合せしているのですが、洋上では「お互い」上手くいきません。皆さんが想像する以上の荒波ですから。
正直、この様な危険、矛盾を承知で活動を続けています。
長々と記しました・・・・・「だったら行くなよっ」と言うご意見もあると思います。
そして我々の漁業活動は建前だというご指摘があります。否定しません。この切り口は、「領土領海」、「固定資産税」に続き第三弾ですから。
※新たな第四弾として「生物多様性」を切り口に行動を起こすアドバイスも頂いています。これについては、いずれ詳細を記します。
では何故、尖閣諸島へ行くのか?
これは以前何度も記しました様に、実効支配を裏付ける社会的営みを行う為です。我々が実施しようがしまいが、中国公船は領海侵入を繰り返しています。我々が活動をやめれば、今度は中国の漁船が大挙押し寄せて来るでしょう。そして、中国漁船を中国公船が守るのです。そして、その画をとられ、静々と「尖閣諸島は中国の領土」という世論が作られるのです。
だから、ヤメる訳にもいかないのです。政府が動けば我々の活動は必要もなくなるかもしれません。そういう事態です。
折に触れて海上保安庁(背広組)を批判しておきながら、現場では海上保安庁が頼りです。我々が拿捕されそうになったら、超法規的に我々を助けてくれるかどうか?それとも、法的な枠組みに従って助ける事が出来ず拿捕され、国益を損なってしまうか?勿論それを試す為にやっているのではありません。実効支配という現実を継続する為です。
ただ、これをこの状態のまま、
虚しいやり取りをいつまで続けていけば良いのかという自己矛盾があります。毎回、海上保安庁は10数隻の巡視船を出動させる。この重油代は数億かかっているでしょうし、原資は皆さんの税金です。
実はそういう事も全て承知した上での苦肉の活動なんです。使命感だけが支えです。
「尖閣諸島に行く」それをパフォーマンスと捉える人もいらっしゃるでしょう。残念です。国益を守るために、しかし場合によっては国益を損なう危険性も含めての、ギリギリの判断をした上での活動です。勿論、参加者全員実費です。石垣までの飛行機代、漁船の燃料代、ホテル代すべて実費です。
片道8時間、船に乗れば24時間以上荒波に揉まれます。「海に落ちたら溺れる前に死ぬからなっ」何故?溺れる前にサメに喰われる様な危険なところです。こんな状態でパフォーマンスは16回も続けられません。
そして、何よりも、海上保安庁を最後まで信じています。だから、行けるのです。
この活動を評価をして欲しいとは思いません。我々の現場で見た事実報告を見聞きして、皆さんには「政府、マスコミよ!このままでいいのかっ!!!!!!という世論形成」に参加して欲しいのです。
他の日本周辺海域の危機を考えると、我国に余裕は全くありません。肥前鳥島、男女群島・・・ここにも焦点を当てていかなければならないのです。
こんないろいろな事を考えながらやっています。どうぞ我々の活動をご支援下さい。時には厳しくご指摘下さい。皆さんの手足となって活動しますので、今後ともよろしくお願い致します。