思い出

2014年08月21日 | 日記
このブログに時々コメントを下さっていたドイツ在住のくみさんが、昨夜、ドイツのホスピスでお亡くなりになりました。享年48歳、乳がんでした。
10年ほど前になるでしょうか、くみさんが熊本にお里帰りされている時、たまたまドイツ語関係のお花見会があって、ご主人と一緒に参加されたのが初めての出会いでした。日本を飛び出してドイツ人と結婚し、当時はご主人のお仕事の関係でルーマニアに住んでいて、アマチュアの合唱団に入って歌に目覚めた、と話してくれました。はつらつとした明るい方でした。
その後、ネットサーフィンをしていてたまたま私のブログに行き当たったそうで、よくメールやコメントを下さるようになりました。3年ほど前にお里帰りされた時は子連れでした。子供のできないご夫婦だったので、ベトナム人の女の子を養女にしたのだそうです。そのお子さんをバギーに乗せて一緒に大学のキャンパスを散策しながらゆっくりおしゃべりをしました。その時のことを後日、
緑陰やバギーに眠る異国の児
という俳句に詠んだことを覚えています。
数日後、熊本日独協会の年次総会に飛び込み参加して我が合唱団の歌を聴いて下さり、「私もドイツで合唱をしています。皆さんもどうぞ楽しんで歌い続けて下さい」とメッセージを下さいました。そして、せっかくの機会だからヴォイストレーニングを受けたいとおっしゃるので、ご実家に伺って、くみさん、義理の妹さん、小さな2人の姪御さんの4人にファミリーレッスンを3回ほどさせて頂きました。
その翌年の2月、M先生たちとご一緒にウィーンに演奏旅行に行った時、くみさんはドイツからわざわざウィーンまで会いに来て下さいました。その時は既に病気を発症していて、ストーマを2つ装着していましたが、深刻な病気であることをみじんも感じさせない様子で、私たちの練習に付き合ってくれたり、2人で教会のミサや食事に行ったりしました。
次に会うのはいつかな、と言って別れましたが、その年の9月、私たちのメサイアの集中練習に参加したいとおっしゃって、単身で一時帰国されました。阿蘇での合宿の後、私はかかりつけの整体の先生のところにくみさんをお連れし、M先生も東京で、お知り合いの高名な専門医とくみさんを引き合わせて下さいました。
ドイツに帰られた後のメールのやり取りの中で、病状がだんだん悪化していることを知らされました。もう帰国するのは難しいと言うので、私は夏休みにお見舞いに行くことにしました。ご実家の義理の妹さんもお子さん2人を連れて一緒に行くことになり、9月9日のフライトを4人分予約しました。一日も早く、と思いましたが、いろいろな都合で9月にならないとまとまった時間が取れません。W先生の娘さんのRさんがドイツに住んでいらっしゃるので、Rさんにもくみさんのお友達になって頂けるようお願いしました。Rさんは時々くみさんに電話したり、日本の本を送って下さったりしていました。くみさんが緩和ケアのためホスピスに入られたことを知らせてくれたのもRさんでした。電話してあげた方がいいよ、とくみさんの携帯電話の番号を教えてくれたので、すぐに電話しました。くみさんはとても喜んでくれましたが、残り時間が少なくなっていることを実感した私は、時々電話をして声を聴き、安否確認をしていましたが、電話に出られないこともあり、不安を募らせていました。くみさんのご主人から、もう輸血も効果がなくなり、いつどうなってもおかしくない状況だという電話と頂き、Rさんにそれを伝えると、数日後、Rさんはくみさんに会いに行って下さいました。くみさんがとても喜ばれたので、明日もう一度、ドイツ在住の叔母様と一緒にお見舞いに行って下さるというメールを頂き、昨夜、叔母様にも「くみさんのことをどうぞよろしくお願いします」とメールしたばかりでした。
そして今日の夕方、くみさんのご主人からメールが届きました。くみさんの訃報でした。ご実家に伝えてほしいと書いてあったのですぐに義理の妹さんに電話しましたが、二人とも絶句したまま言葉が出ません。この数ヶ月、ずっとくみさんのことを思って過ごしていたので、最期に会えなかったことが無念でなりません。数日前に電話で「近いうちにRさんがまた叔母様と一緒にお見舞いに行って下さるそうよ。私も先週、素敵な絵本を見つけたのでご自宅に送ったから、気分のいい時に読んでね」と話したのが最後でした。くみさんは「嬉しい、楽しみだわ」と言っていました。最後まで前向きでした。
ヨーロッパと日本をまたにかけてのくみさんとのお付き合いは、不思議な、温かい、楽しいものでした。遠く離れていても、それほど近い間柄でなくても、心が通えばこんなに深い絆ができることに、私はいつも感動していました。人は皆いつかはこの世とさよならしますが、それでもまたいつか会える。私はそう信じていますが、もうこの世にくみさんがいないことを得心するには、しばらく時間がかかるかもしれません。9月には予定通りドイツへ行き、お墓参りをしてこようと思っています。

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2 コメント

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Unknown (ドレミファそら豆)
2014-08-25 15:36:06
くみさんがお亡くなりになられたのですね。

私は一度しかお会いしたことは有りませんですしたが・・・優しいお人柄だなァ~~と思ったのを記憶しています。

まだお若いのに本当に残念ですね。、  御冥福をお祈りいたします。

先生もどうぞ落ち込んだりなさらないでください。

心の中では・・・先生と一緒に生き続けられますよ。
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Unknown (吉田)
2014-08-26 09:06:41
そら豆さん、お気遣い有難うございます。
人懐っこく、たくさんの人に愛された久美さんでした。先日ご主人からメールが来て、私が9月9日にドイツに行くので久美さんの告別式の日程を9月10日にして下さったそうです。2人が結婚後しばらく住んでいたルーマニアからもご友人たちが参列なさるとのこと。
なぜか久美さんが遠くへ行ってしまった気がしません。電話をすれば、あの屈託のない声で「ああ、李佳さん!」と答えてくれるような気がしてなりません。
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