脚力

2015年08月18日 | 日記
2月の東京文化会館でのコンサート以来、W先生が足を骨折なさったり体調がすぐれなかったり、お疲れが出たような状況だと伺っていて、気になりながらもずっとご無沙汰していましたが、ようやく今日、久し振りにお伺いできました。「歳をとっちゃったからね~」と体のそこかしこに故障が出ることを嘆かれていましたが、今日はすこぶるお元気そうにお見受けして一安心。リサイタルの曲を一通り聴いて頂くことになっていましたが、「私、宗教曲は疎いのよね」と仰っていたので、エマ・カークビーの歌うヘンデルの「9つのドイツアリア」のCDを持って行ってご一緒に聴きました。カークビーは比較的太い声帯なのに、メリスマの効いた曲を軽々と歌っているのに驚かれ、「でも、あなたの声はカークビーよりはオジェに近いわよね」と仰いました(オジェのCDは今ちょうど貸出中なので持参できませんでしたが)。そして「2月の発表会の時のあなたの歌、とっても良かったんだけど、ちょっと上ずる感じがあったのよね、あれは足の力が足りないせいだと思うわ」と仰いました。上ずり癖は私の長年の悩みなのですが、足と言われると思い当たる節があります。実は最近、女性専用のフィットネスクラブに通い始めたのですが、最初の体力測定で片足スクワットをした時、右足だと30秒に9回できたのに、左足は1回しかできなかったのです。歌っていても、体力の要るフレーズに差し掛かると体重が自然と右にかかってくるのが自分でもわかります(生まれつき骨盤の左側がわずかに亜脱臼しているのと、両脚ともにアキレス腱が短いのでしゃがむことができず、それも脚力に影響している、と以前整体の先生に言われたことがあります)。今日は最初に、腰掛けて足をしっかり使いながら低い声で短いハミングをする練習をしましたが、これは割とうまくいきました。次に「トドの声」という新しい発声法(笑)。口蓋垂を思いっきり引き上げておいて、内転筋から直接目の裏へつなぐ感じで、鼻声のような呻き声のような、ちょっと言葉では説明しにくい声を出します。声が喉に止まらないように、一気に目の裏まで飛ばすのです。これができると息が速く回るようになると仰っていましたが、これは足をすごく使わないとうまくいきません。脚力が呼気の強さ、高さの決め手なのですね。
その後「9つのドイツアリア」を歌ってみました。高い音程への跳躍の時は胸骨を少し下げると、上後鋸筋が拡がって息が後ろから回り、高音が突出しないできれいなレガートができると仰いました。やってみるとなるほどです。また、細かい音符はブツブツ切れて聴こえやすいので、一度母音だけで歌ってみてレガートの感じをつかむこと、また、細かい音符をあまりカチャカチャした感じで歌われると聴いていてだんだん退屈してくるので、(宗教曲だからあまりロマンティックな表現はできないにしても)少しはアゴーギクやデュナーミクをつけて歌詞の意味を表現してもいいのではないか、とアドヴァイスを頂きました。また、下行音型の時に息を下げないこと、フレーズの頭や跳躍の時に「準備」をすること、即ち、前もって「脚に力を入れ、口蓋垂を上げ、目の後ろを開けておく」こと、等を教えて頂きました。確かにそれで随分歌いやすくなります。息を上げるにしても回すにしても、基本中の基本である「口の奥をしっかり開けること」が必須条件なので、毎日軟口蓋をマッサージしてね、と仰いました。さる高名な日本人ソプラノの方も、日本語を喋っていると上あごが落ちてきて口の奥が狭くなるので、毎日口の中に手を突っ込んで口の奥を開けているのだそうです。
総括。今日一番言われたことは「脚!」です。歌っている途中で何度も「脚よ、脚!」と言われ、足先や内転筋にぐっと力を入れると、その都度声がスッと抜けてレガートも高音もクリアできました。脚力強化のため、フィットネスクラブ通いに精出すとしましょう。

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