楽曲解析2.憧れの人のまわりに

2019年09月14日 | 日記
今日の熊本日日新聞朝刊の文化面に、10月5日のリサイタルの記事が掲載されました。記者の飛松さんは熊大哲学科OGで、詩人の西川先生と昵懇の素敵な女性でした。渋る西川先生を説き伏せ、二人並んだ写真を撮って掲載して下さいました。良い記事を書いて頂き、感謝です。
さて、今日はバロック中期の作曲家アントニオ・チェスティのオペラ「オロンテーア」のアリア「憧れの人のまわりにIntorno all'idol mio」です。これもイタリア歌曲集第2巻に載っています。このオペラ、今では上演されることはほとんどないと思いますが、このアリアは単独でイタリア歌曲としてよく歌われます。オロンテーアというのはエジプトの女王様のお名前。このやんごとなき御方が、フェニキアから逃げて来た画家アリドーロに身分違いの恋心を抱いて歌う、何とも典雅でメランコリックなアリアがこの「憧れの人のまわりに」です。

Intorno all'idol mio  憧れの人のまわりに
Spirate, pur spirate,  どうか吹いておくれ
Aure soavi e grate;  柔らかい、爽やかなそよ風らよ
E nelle guance elette  そして あの人の気高い頬に
Baciatelo per me,   私に代わってくちづけしておくれ
Cortesi aurette!   優しいそよ風らよ

Al mio ben, che riposa  いとしい人は
Su l'ali della quiete,  静寂の翼の上に憩う
Grati sogni assistete  その心地よい夢に寄り添い
E il mio racchiuso ardore  この秘めた熱情を
Svelategli per me,  私に代わって明かしておくれ
O larve d'amore!  おお 愛の幻影よ

イタリア歌曲集は編集者のパリゾッティによってかなりロマン派風に編曲されているので、私は友人の持っていた古い(多分作曲当時の)楽譜のコピーを送ってもらって、それに準拠して歌っています。伴奏が3つぐらいの楽器で演奏される楽譜なので、一人で伴奏できるように統合した楽譜を作りました。伴奏も歌唱部もパリゾッティ版とはかなり趣が異なります。今回はハープ伴奏で歌うので、以前この楽譜でチェンバロ伴奏で歌った時とも印象が違いますが、ともかく、どうやっても素敵な曲です。素敵に歌えるかどうかが問題ですが(笑)。こういう古い歌はノンヴィブラートのすっきりとした声で、テンポの揺らしもほとんど無く、あくまでシンプルに歌わないといけません。それだけに、完全レガートで歌わないとぶっきらぼうになってしまいます。また、3拍子の曲ですが、現代の強・弱・弱の数学的な拍節とは別の、グレゴリオ聖歌のアルシス(跳躍・上昇)・テージス(休息・下降)を思わせるリズム感が支配的です。そのせいか、まるで宙を漂っているような浮遊感があるのです。それがまた歌詞の内容ともよく合っていて、とても魅力的なのです。さーて、その魅力にどれだけ迫れるか。

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