発音と発声

2020年05月12日 | 日記
遠隔授業に振り回されて、自分がヴォイストレーナーであることを忘れそうになる日々に危機感を覚え、リモートレッスンを行っておられるY氏にイタリア歌曲の発音レッスンをお願いしました。Y氏も私も本領はドイツものですが、最近イタリア語のディクションにもこだわっておられる、と先日お聞きしたので。私もイタリア語は音大で日本人の先生に習っただけなので、ディクションの勉強をしたいと以前から思っていました。そこで、コロナ禍で延期になった南阿蘇のミニ・コンサートでプログラムに入れていた「Le violette」を使って、スカイプで30分の発音中心レッスンを受講しました。備忘のためここに要点を記します。皆様のお役に立てば嬉しいです。
まず、イタリア語のeとoには閉口と開口がある、という話。大抵の場合閉口ですが、時折開口のeが出てきます。「Le violette」の中では、「mezzo」(半ば、の意)のeが開口です(ちなみに、この曲には開口のoは出てきません)。開口のeについては私も前から気になっていて、どんな時に開口になるのか、何か規則があるのでしょうか、と伺ったのですが、よくわからないとのこと。ただ、開口のeは全部で10個ぐらいしかなく、mezzoとかterraのように短母音なのだそうです。
次に、冒頭の言葉「rugiadose」のgiaです。これは破擦音(破裂+摩擦)の「ヂャ」という音で、発音する時には舌が硬口蓋に当たっています。この音は「Gia il sole dal gange(陽はすでにガンジスから)」の冒頭のgiaと同じですが、この発音ができていない人が多い、つまり舌がちゃんと硬口蓋に付いていない人が多い、とY氏が仰っていました。確かに日本人は舌の弾きが弱いので、破擦音はしっかり言わないと聞こえませんね。mezzoとかgrazioseのz音も破擦音です。
一方、発音記号[z]の音は破擦音ではなく、舌が硬口蓋に付きません。カナで書けば「ザ ズィ ズ ゼ ゾ」。たとえばascoseのseは、舌はどこにも付きません。
glieという時の「l」は、私は「リキんで発音せよ」と大学で習ったのですが、Y氏によるとこれは「硬口蓋接近音」で、舌を硬口蓋の近くに持って行くが、べったりとくっつけない、のだそうです。yをひっくり返したような形の発音記号です。へえ~。
二重母音については、ドイツ語と違って2つ目の母音の方が優位なのだそう。3:7ぐらいの割合で2つ目の母音を長く発音するのだそうです(voglieの-ieとか,、grazioseの-io、violetteの-ioなど)。これは、二重母音の2つめの母音が1つめの母音の口形にひきずられるドイツ語とは対照的です。
vergognose(恥じらって、の意)の-gnoの発音は「後部歯茎音」のニョです。「ニャ ニュ ニョ」は少し鼻腔共鳴が必要です。あまり多すぎると声がぼやけますが、私は声が後ろに行き過ぎるので、鼻腔共鳴も少し練習しなければ。鼻音の時には軟口蓋を若干下げるのだそうです(私はどうも軟口蓋が常に上がっているみたいです)。mやnの音は、軟口蓋を少し下げる方が鼻腔への通路ができる、とのこと。ついでに言えば、iとuの発音は、口腔が狭い方が口の奥が開きます。
面白かったのは、eの後の単語の語頭に「二重子音現象」というものが生じる、という話。e sgridateというフレーズがあるのですが、これは「エッ ズグリダーテ」という感じに、語頭のsが促音化するのだそうです。che son も「ケ ッソン」という感じにsが詰まるとのこと。
他には、破裂音をはっきり発音することも注意されました。tropp'anbizioseというフレーズのppはしっかり破裂させる。破裂音は6つあるそうです。
イタリア歌曲集の巻末にイタリア語の発音規則が載っていて、それを見ながら手探りでイタリア古典歌曲を歌っていた高校時代の記憶が蘇りました。そういえばこういう説明が載っていましたよね。やっとつながってきました。

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