一人っ子のゆきたんくである。
競争なんてものと無縁であった。
飯もゆっくり食っていい。
お小遣いをもらっても自分の机の上にむき出しで置いてもなくならない。
あぁ~あ、幸せ。
そんな男が全寮制の高校へ進学だって?
入寮そうそう、やらされたことがある。
寮生活で履くのはサンダルである。
寮でもサンダル、学校でもサンダル。
運動の時だけは運動靴だったな。
雪駄の先輩もいた気がするが、はっきりとはしていない。
そう、何をやらされたか。
白ペンキでサンダルに記名をするのである。
これが面倒くさい。
仲間が書いている間に順番を待つ。
一人っ子自分勝手のゆきたんくはそのわずかな時間が我慢できない。
「面倒くせっ」
書くのをやめてしまったのである。
その意味を思いしらされたのは、次の日だ。
風呂に行く。
風呂から上がる。
自分サンダルがない。
「誰か間違えたんだろう。」
はだしで部屋に戻り、しばらくして風呂場に行った。
残っていたのはボロボロのサンダルだった・・・