三匹の猿

2014-10-31 22:16:23 | お酒
スーパーの酒売り場で珍しいウイスキーを見つけた。
業界の人には珍しくないウイスキーかもしれないが、私は売られているのを初めて見た。
名を「モンキーショルダー」と言う。
その存在はマンガのレモンハートに登場した話を読んでいたので知ってはいた。
このマンガに出てくる酒は珍しいものが多いので、見たことのない酒のエピソードを読んでは、どんな味なんだろうと想像のよだれを垂らすのである。



最近買ってるウイスキーはおとなしい味の奴ばかりだから、久しぶりにちょっと主張のありそうな地方ものを奮発してみようかと思い売り場を覗いてみたのだが。
居並ぶ見慣れた(飲み慣れた、ではない)高級ウイスキーに混じり、異彩を放つボトルに目が留まる。
そう、なによりこのウイスキー、ボトルデザインが特徴的。
三匹の猿を形どった立体的なワッペンがボトルの肩に貼り付けられている。



こ、こ、こ、これはあの…。
い、いくらするのだろうと値札を見ると、意外にもバカ高くはなく、ちょっと贅沢してみようかと惹かれるくらい。
ブレンデッドだがグレーンは含まず三種のモルトのみで調合している。
他のスコットランドのシングルモルトとどちらを買おうか迷ったが、やはりこのお猿さんの魅力には敵わず初購入。



封を開けてテイスティンググラスに注ぎ鼻を近づけると、豊かな香りが溢れてきていた。
漂う香気を吸い込むと甘く香ばしい。
柑橘系のすがすがしいにおいも。
口に含むと丸く上品な甘みが拡がり、その後黒糖のようなコクのある甘みに凝縮し、長い時間をかけてゆっくりと薄れ行く。
いーなーこれ。
シングルモルトのある種突出した荒々しさを抑えつつ、それぞれのモルトの旨味を調和した感じだろうか。



モンキーショルダーの名前は、昔の蒸留所での重労働に由来するそう。
ウイスキーを造る最初の工程である製麦で、原料である大麦を水に浸した後取り出し、広い部屋の床いっぱいに拡げて発芽させるのだが、発芽により発生する熱を逃がし、酸素を与え、伸びてくる根が絡まないよう、専用の用具でもって大麦を撹拌する作業が必要となる。
これが厳しい肉体労働で、従事する作業者が肩に猿が乗っているようだと形容した事から命名したらしい。
酒造りは肉体的にも精神的にもしんどい作業が多いが、そのご苦労のお陰で我々は美味しいお酒が飲める。
ありがたい事である。





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