A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

面倒をみた新人のレコーディングの手伝いのつもりがいつの間にかリーダーに・・・

2015-09-26 | PEPPER ADAMS
Generations / Pepper Adams & Frank Foster

世間ではフォルクスワーゲンのエンジンの制御ソフトの不正処理が話題だ。これは単なる設定ミスや事故といったレベルの話ではないので深刻だ。要はクリーンディーゼル&低燃費を謳っていた技術が未完成だったので、検査だけをパスするように誤魔化していたという事になる。

車に限らず、その性能を測定するためにベンチマークテストというものはよく行われる。テストの仕様に向けてパフォーマンスをチューニングしていくので、一般的な使用環境ではその性能が出ないのは世の常である。車では燃費性能がいい例だろう。だが、燃費の場合は、実際の燃費というのもカタログスペックの良し悪しに比例するものだし、ドライバーが燃費の悪い乗り方をすれば当然悪くなる。これは、利用者にとって納得できるものだろう。

しかし、今回は、検査の時だけに排気ガスの処理装置がフルに稼働し、それ以外はほとんど機能しない設定に。その理由も、エンジン性能を維持するため、処理装置の寿命を延ばすためというメーカー都合。本来の目的の排気ガスの浄化はどこに行ってしまったのだろう。車では一部のマニアが車検を通すために一時的にパーツを交換するということもあるようだが、それはあくまでも自己責任の範囲、今回はメーカーが自分の能力不足を隠す為というのだから問題外だ。ユーザーの理解など得られるはずがない。

今の世の中、色々な分野で規制やルールが厳しくなっているが、このような事が明らかになると果たして本当に規制が守られている商品が世に出ているかどうか怪しいものだ。一時、食品の産地や原材料の偽装が次々に問題になった。今回の問題も、単に、ディーゼル、フォルクスワーゲン、そして自動車業界だけの話で終わらないのではないかと思う。

その原因というと、やはり、現在の売上至上主義、さらには何を差し置いても自社の利益が最優先という、行き過ぎた市場経済、そして企業競争に帰結すると思う。先日の東芝の不正経理と、経営者のとった行動の背景は同じだ。

昔からコマーシャリズムという言葉は、「何か良い物を壊す」という悪い意味を帯びていたが、今回の件は、壊すどころか生活者の生活を脅かすとんでもないモンスター商品を生み出したことになる。マス商品、メガショップ、グローバル市場の悪い側面の行く末を予感させる。
ネット社会の普及によって、何も大きくなくても良いもの、いい店は生きていける時代になった。もう一息頑張って欲しい。

ジャズの世界でも、コマーシャリズムというのは良い意味では使われていない。特に実直なストレートな演奏を好む日本のジャズファンにとっては、コマーシャリズムに毒されたアルバムは、演奏するミュージシャン自体が否定されることもあった。
ジャズレーベルというのは一部のメジャーレーベル以外は、皆マイナーレーベルといってもいいが、その中でもそこそこ有名になると、どうしても「売るための」アルバム作りが行われるものだ。

ペッパーアダムスの晩年は、メジャーレーベルとは無縁であったし、売るためのアルバム作りというのにも縁が無かった。

ここに一枚のアルバムがある。

レーベルはMuse。マイナーではあるが70年代以降のハードバップ系ではそこそこ名の通ったレーベルで、カタログには500枚くらいがリストされている。

リーダーはというと、ペッパーアダムスとフランクフォスターの名が並ぶ。ペッパーアダムスのリーダーアルバムの一枚と思われがちだが、アダムスの研究家ゲイリーカーナーの定義ではアダムスのアルバムには入らない。

ジャケット写真を見ると2人の顔写真があるが、黒くマスクが掛けられていいるようで誰の顔なのか分からない。右側はフォスターのようだが、左側は輪郭からアダムスには見えない。では誰なのか?そして何故このようにしたのか?

共演しているメンバーを見ると、サックスのジェイムス・ディーン以下、リズム隊も無名のメンバー達だ。2人のベテランが新人達を従えての演奏のように感じる。



1曲目を聴くと、4管でのテーマのアンサンブルに続き、フォスターのテナー、そしてアダムスのバリトンのソロはいつものように豪快に続く。アルトは可もなく不可もなく、ソロのフレーズ作りは少し癖があり、あまり流暢とはいえない。リズム隊は、ドラムを筆頭に小気味よいリズム感だが、こちらも平凡といえば平凡だ。
フォスターは、曲によってソプラノに持ち替え、アダムスが参加しない曲も。B面に移ると、ウェストコーストジャズ風のアンサンブルワークで少し曲想が変る。かと思えば、クラリネットとピアノのデュオによる演奏も登場。

改めて、このアルバムは誰のプロデュースと思ってジャケットを見ると、ジェイムス・ディーンの名前が。読み進むと、アダムスとフォスターの紹介から始まるが、どうもこのアルバムの主役はプロデュースをした、ジェイムス・ディーンという事が分かる。

フランクフォスターの後日談によると、フォスターもアダムスもディーンのレコーディングへのゲスト参加で、これはあくまでもディーンのアルバムと思っていたようだ。

ジェイムス・ディーンとアダムスとの出会いは1969年。まさにサドメルとデュークピアソンのレギュラーメンバーで日々活躍していたアダムスが、ある日NavyのBig Bandのサックスセクションのクリニックを行った時、このネイビーのバンドにいたのがディーンであった。そしてアダムスの紹介で、フォスターに弟子入りしたというのがディーンと2人との出会いであった。

という訳で、このアルバムはニューヨークでフォスターの指導のもと、プロとしてそこそこ活動できるようになったディーンの初のリーダーアルバムというのが正解で、あくまでも2人は応援参加であった。
実際に内容は、タイトル曲のGenerationはビッグバンドのアレンジで知られるようになったのをコンボ用に自ら仕立て直し、クラリネットのアーティーショーやテナーのズートシムに捧げた曲を提供するなど、初アルバム作りに力が入っていたようだ。

このような形でリリースされたことにディーンはクレームを付けたようだが、Museの会社としての判断は、所詮無名の新人のリーダーアルバムでは売り物にならないということであったようだ。
中身の偽装は無くても、売るためには看板を掛け替えなければならないとうのは、商売をするには仕方がないかも。このアルバムもディーンのリーダーアルバムでは果たして何人が手にすることになったか分からない。

アダムスにとっては、1984年の怪我から復帰後すぐの録音。前回紹介したギターのPeter Leitchのレコーディングが11月17日。19日にはこのディーンのセッションのリハーサルが行われている。その後Hod O'Brienのセッションのリハーサル・本番を経て、1月25日にこの録音を終えると、すぐにロンドンに旅立っている。3月にスウェーデンでがんの宣告を受ける1カ月半前の演奏だ。

1. Generation
2. Dance of Infidels
3. Stable Mates
4. Titter Pipers
5. Moon In Question
6. Milestone
7. Inventory

James L. Dean (as,ts,cl)
Frank Foster (ts,ss)
Pepper Adams (bs) 
Vinnie Cutro (tp)  #1
Noreen Grey (p)
Earl Sauls (b)
Glenn Davis (ds)

Produced by James L. Dean
Engineer : Rudy Van Gelder
Recorded at Van Gelder Studio,Englewood, N,J. on January 25, 1985


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