A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ペッパーアダムスのサドメルオーケストラでのラストレコーディングは・・・・?

2014-07-13 | PEPPER ADAMS
It Only Happens Every Time / Monica Zetterlund, Thad Jones & Mel Lewis Orchestra

サドメルオーケストラが、ビレッジバンガードで初ライブを行ったのは1966年2月7日。この日の演奏はFMでも中継され、CDでもその演奏は残されている。ペッパーアダムスはその時リーダーのサドジョーンズとコンビを組んでいたが、そのままこのオーケストラにも参加した。
そして、そのペッパーアダムスが、サドメルのオーケストラを辞めたのは1977年8月24日。丁度ヨーロッパツアーの途中でストックホルムに滞在している最中であった。

オーケストラに加わって11年、メンバーの入れ替わりも多くなっている中、両リーダー以外に11年間続けて在籍したのはペッパーアダムスとジェリーダジオンの2人であった。
アダムスはちょうど35歳から46歳まで、人生で一番脂の乗り切った時をサドメルオーケストラで過ごしたことになる。

サドメルとのファーストレコーディングは66年2月7日の初演、これにアダムスも当然参加している。
「ラストレコーディングは?」というと、実はこのアルバムになる。

77年8月23日録音、翌日バンドを離れアメリカに戻るので在籍最後の日の録音。本当の意味でのラストレコーディングになる。
この事実を踏まえて、このアルバムを聴くとこのアルバムの位置づけもはっきりしてくる。

このアルバムの主役モニカゼタールンドとペッパーアダムスは昔からの知り合いであった。
1961年にはドナルドバードとのクインテットで彼女と録音もしている。あの有名なエバンスとのアルバム“ Waltz For Debby “より3年も前の出来事だが、残念ながら世には出ていないようだ。

このアルバムのジャケット裏に録音時の集合写真がある。
ジャケットの表の写真は彼女とサドジョーンズのアップの写真であるが、裏の写真ではリーダー2人を差し置いて中央に彼女の横に立つペッパーの姿を見ても、このアルバムのもう一人の主役はペッパーアダムスであったのは間違いないだろう。



アダムスは、異国の地スウェーデンでバンドを離れることになったが、そのスウェーデンに住む昔からの友人ゼタールンドと、サドメルオーケストラのメンバー達が、アダムスに餞別の意味を含めてのレコーディングを行ったのではないだろうか思われる。
というのも、このレコーディングは用意周到に企画されたものではなかったので。

サドメルオーケストラの歌伴というと、初期のソリッドステートレーベル時代、ジョーウィリアムスルースブラウンのバックを務めた2枚のアルバムがあった。どちらも、ブルースを得意とする2人。ジョーンズのスマートなアレンジが脂っこさを中和した、好アルバムだろ思う。
このゼタールンドは少しイメージが違う。しかし、名アレンジャーサドジョーンの手にかかると、彼女の歌の魅力を引き出す違ったアレンジをするのではないかと期待するのだが。

しかし、このレコーディングの準備は実際にはとんでもない突貫作業だったようだ。
コンサートツアーの移動中のバスの中、ピアノも手元にない中でジョーンズはスコアを書き続けた。スタジオに入ってからも皆でパートを仕上げながら、リハーサルもそこそこで録音に臨んだ。これもアレンジャー、サドジョーンズの名人芸のひとつだったようだが。

長年サドジョーンズの片腕として、ペッパーアダムスはオーケストラ全体を聴く耳を持っていた。スタジオで遠く離れたトロンボーンセクションにやってきて、「ここは自分がトロンボーンセクションと一緒に吹くことになっているが、どうしよう思っている?」と確認していった。「すでにアダムスの頭の中には全体の中で自分の役割が認識されていた。そこが長くオーケストラ生活を過ごしてきたアダムスの凄い所だ」と、当時のメンバーとして参加していたサムモスカのコメントもある。

タイトル曲のIt Only Happens Every Timeは、サドメルのComsummationにも収められている綺麗な曲。Groove Marchantなどサドメルの有名曲もあるが、すべてがサドメルの曲という訳でもない。

歌と演奏が今一つしっくりこない部分があるのは、このような諸々の裏事情があったからだろう。

いずれにしても、オーケストラが録音に臨んだのは8月20日と21日、フィランドのヘルシンキであった。しかし、まだアルバム一枚には足りなかった。そして、最後の23日にストックホルムで最後の3曲が収められた。Happy Againはオーケストラなしで、アダムスとリズムセクションだけがバックを務める。

これで、やっとアダムスの最後に日までに何とかアルバムが完成したということになる。
アダムスのゼタールンドとの友情の証、そして皆からのアダムスへの餞別と考えるとこのアルバムの味わい方も変わってくる。





1. It Only Happens Every Time        Thad Jones 5:12 
2. Long Daddy Green  Blossom Dearie / Dave Frishberg 3:38 
3. Silhouette                Lars Gullin 4:32
4. He Was Too Good To Me  Lorenz Hart / Richard Rodgers 5;05 
5. The Groove Merchant        Jerome Richardson 4:06 
6. Love To One Is One To Love        Thad Jones 4:13 
7. Happy Again               Lars Gullin 4:15
8. The Second Time Around  Sammy Cahn / James Van Heusen 5:13 

Monica Zetterlund (vocals)
Thad Jones (flh)
Frank Gordon (tp)
Earl Gardne (tp)
Jeff Davis (tp)
Larry Moses (tp)
Earl McIntyre (tb)
John Mosca (tb)
Clifford Adams (tb)
Billy Campbell (tb)
Jerry Dodgion (as,ss,fl,cl)
Ed Xiques (as,ss,fl,cl)
Rich Perry (ts,fl,cl)
Dick Oatts (ts,fl.cl)
Pepper Adams (bs)
Harold Danko (p)
Rufus Reid (b)
Mel Lewis (ds)

Recorded at Sound Track Recording Studios, Helsinki on 20-21 August 1977
at Swedish Radio, Stockholm on 23 August 1977 (#2,3,7)


It Only Happens Every Time
Monica Zetterlund
Inner City
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