A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ペッパーアダムスが恋した女性・・・・ルースプライスとは?

2014-07-24 | PEPPER ADAMS
Ruth Price with Shelly Manne & His Men at the Manne Hole

1964年、東京オリンピックの年だ。この年のペッパーアダムスも昨年同様ライオネルハンプトンのグループに加わっての仕事始め。ロスアンジェルスから始まり、南部を廻ってニューヨークに戻ってきたのは3月になってから、長いロードの毎日であった。ミュージシャンにとっては生活のためにはこのようなレギュラーバンドへ加わるのが一番だが、反対に毎日同じような演奏を繰り返すのには多少うんざりしていたのかもしれない。

4月1日、何かの区切りだったのか、気分転換か、アダムスはニューヨークの住まいの引越しをする。今度の新居はマンハッタンを南に下ったグリニッチビレッジ。その後参加するサドメルの拠点であるビレッジバンガードからは、歩いて10分もかからない所であった。何か予感があったのかもしれないが、ここにアダムスは1972年まで住み続け、ニューヨークに居るときには毎週月曜日になるとここからビレッジバンガードまで通うことになる。

その後もハンプトンのグループでアメリカ中を廻るが、6月にはスキーリゾートとして有名なレイクタホのステートラインにいた。このレイクタホの近くにはカジノで有名なレノがある。ラスベガス同様ここにも多くのミュージシャンが訪れる。前の年、アダムスが誘いを受けたハリージェイムスのオーケストラも同じ時期にここを訪れていた。このハリージェイムスオーケストラは直前の4月には来日しているが、その模様はTBSの映像にも残されている。ドラムにはあのバディーリッチも加わっていた。その時のハリージェイムスオーケストラの専属歌手が実はルースプライスであった。

その時の映像がこれ↓



アダムスは、近くに来た好もあってかハリージェイムスのバンドを訪れた。そこで、目に留まったのがルースプライスであった。彼女とは初対面であったのか? 
彼女がロスに来たのが1957年、ちょうどアダムスがロスで活躍していた時だ。アダムスの参加したベツレヘムのアルバムに“Jazz City Presents Bethlehem Jazz Session”というアルバムがある。これはロスのジャズクラブJazz Cityでのライブアルバムだ。

彼女のバイオグラフィーを読むと、彼女はペンシルバニアの田舎町フェニックスビルの出身。町でジャズを聴く機会もなく、小さい頃はバレリーナを夢見る少女であった。ひょんなことで、チャーリーパーカーの演奏を聴きすっかりジャズの虜に。歌を始め、チャーリーベンチュラにグループに加わりジャズ界デビュー。レコーディングの機会を作るまで漕ぎつけたものの鳴かず飛ばず。地元とニューヨークを行き来していた時、西海岸で新たなレコーディングの話が舞い込んだ。喜び勇んでロスに行ったものの、そのレコード会社は倒産してしまいその話もご破算に。多分、そのレーベルは新人を集めていたModeの事であったのだろう。
レコーディングの話は流れたが、そのままロスにとどまったプライスは地元のジャズクラブJazz Cityに出演する機会を得る。「そこでしばらく歌う事が出来た結果、シュエリーマンとも出会う事もでき、西海岸での活動の足掛かりができた」と彼女はその時を振り返る。

58年当時のテレビに出た映像があるが、当時はこんな雰囲気の女性だった。




2つの事実を重ね合わせると、このJazz Cityが2人の出会いの場であった可能性は非常に高い。とすると、彼女とは7年ぶりの久々の再会であった。

アダムスは、初めて会った時から彼女に密かに想いを寄せていたのか、それともその再会で惚れ直したのかは分からないが、ルースプライスに対する恋の炎が突然燃え上がってしまった。
会ってすぐに彼女に結婚したいとプロポーズの手紙を出したのだが・・・
残念ながら、その後二人が結ばれたというハッピーエンドの話は聞かない。

当時の彼女のアルバムとなると、このシェリーマンとのアルバムが一番有名かもしれない。シェリーマンの本拠地であるシェリーズマンホールでのライブ録音で、リラックスした気分で歌っている。
このクラブもロスでは有名だったが、オープンしたのは前の年の秋。ウェストコーストジャズもブームが去ってからのオープンであった。ロスでは有名なシェリーマンのクラブ、週末は本人シェリーマンが自らのクインテットで出演し、ゲスト歌手も迎えるということで人気を博していた。そのゲスト歌手の一人がこのルース・プライスであった。このアルバムはあくまでもプライスがメインなので、せっかくのシェリーマンご自慢のクインテットが伴奏を務めているが、トランペットのコンテカンドリはちょっと顔をだすだけなのが残念。

彼女はその後も歌手活動は続けているが、晩年は、1992年にできたロスの有名クラブ”The Jazz Bakery“を運営するNPOのファウンダーとしても有名だ。

何事にも「たられば」があるが、アダムスがハリージェイムスの誘いに乗ってオーケストラに加わっていたら彼女と行動を共にしていたことになる。もしそこで、彼女と結ばれていたらアダムスのその後の人生が変わったかもしれない。アダムスが、アパートを移ったのも、そろそろ彼女でも見つけて身を固めたいという想いがあったのかもしれない。

1. I Love You                       Cole Porter 2:47
2. They Say It's Spring            Marty Clark / Bob Haymes 3:35
3 .Listen Little Girl          Fran Landesman / Tommy Wolf 4:41
4. Dearly Beloved            Jerome Kern / Johnny Mercer 2:38
5 .I Know Why                   Warren / Gordon 3:57
6. Shadrack                    Robert MacGimsey 3:16
7. Crazy He Calls Me             Bob Russell / Carl Sigman 4:29
8. Nobody Else But Me          Oscar Hammerstein II / Jerome Kern 2:55
9. Nobody's Heart               Lorenz Hart / Richard Rodgers 4:32
10. All I Do Is Dream of You          Nacio Herb Brown / Arthur Free 2:06
11. Who Am I                      Leonard Bernstein 4:19
12. Till the Clouds Roll By/Look for the Silver    Lining B.DeSylva / J.Kern 3:18

Ruth Price (vol)
Conte Candoli (tp)
Richie Kamuca (ts)
Russ Freeman (p)
Chuck Berghofer (b)
Shelly Manne (ds)

Produced by Lester Koenig
Recorded live at the Shelly's Manne-Hole in Hollywood on March 3-5 1961


Ruth Price With Shelly Manne at the Manne-Hole
Ruth Price
Ojc
コメント (4)
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