「5,6百円のチョコレートの袋はないか?バレンタイン用に売っていないか?」と娘に訊いてみた。娘は百貨店勤務である。「ないわね」の答えがあって、そばにいた家人も「デパートには、そんなに安いものはないわよ」ものはないわよと付け加えた。そこには、スーパーとは違うという意味が含まれていた。
私はバレンタインのチョコを指圧の重田名人に贈ろうと考えていた。それには、5,6百円のものがよいと思った。ケチっているのではなく、いわば私の感覚である。名人と我が家の関係から考えても、小さな袋が格好だと思った。名人は全盲である。彼の眼になっているのは姪ッ子である。そのことは、治療中の雑談で聞いて知っている。名人は酒呑みであるからチョコレートは食べないだろうから、袋は姪っ子に渡るだろう。「これ、83歳の競馬好きのお爺ちゃん家の奥さんにもらったんだ」「ふぅん。ありがとう」となる。それでいい。
私は小林一三さんを思い出した。小林さんは阪急デパートの社長であり、宝塚歌劇団を育てた大経営者である。まだほかのデパートでは下りのエスカレーターが無かった頃、真っ先に自店に取り入れた人物である。或る時、小林さんは食堂で両親と2人の子供がカレーライスを食べているのを見た。4人前のカレーを注文する金はないから、4皿のライスと2皿のカレーをとって分けながら食べていた。小林さんはすぐに食堂長の所へ行って、「付け合わせの福神漬を倍にしろ」と命じた。
小林さんが最近のバレンタインデーの様子を見たら、5,6百円の、子供でも買えるパックを用意するようにと命じるのではないだろうか。小学校5,6年生の女の子がいる。2月の中旬だから、まだお年玉が5千円ほど残っている。女の子がデパートへ行く。明日はバレンタインデーである。チョコレートを買おう。他にゲームを買う予定があるから、使えるお金は限られている。女の子が5百円の袋をみつける。これなら買える。明日、パパにプレゼントしよう。小林さんなら、そういう絵を思い浮かべるのではないか。ふと、そんな想像をした。
私はバレンタインのチョコを指圧の重田名人に贈ろうと考えていた。それには、5,6百円のものがよいと思った。ケチっているのではなく、いわば私の感覚である。名人と我が家の関係から考えても、小さな袋が格好だと思った。名人は全盲である。彼の眼になっているのは姪ッ子である。そのことは、治療中の雑談で聞いて知っている。名人は酒呑みであるからチョコレートは食べないだろうから、袋は姪っ子に渡るだろう。「これ、83歳の競馬好きのお爺ちゃん家の奥さんにもらったんだ」「ふぅん。ありがとう」となる。それでいい。
私は小林一三さんを思い出した。小林さんは阪急デパートの社長であり、宝塚歌劇団を育てた大経営者である。まだほかのデパートでは下りのエスカレーターが無かった頃、真っ先に自店に取り入れた人物である。或る時、小林さんは食堂で両親と2人の子供がカレーライスを食べているのを見た。4人前のカレーを注文する金はないから、4皿のライスと2皿のカレーをとって分けながら食べていた。小林さんはすぐに食堂長の所へ行って、「付け合わせの福神漬を倍にしろ」と命じた。
小林さんが最近のバレンタインデーの様子を見たら、5,6百円の、子供でも買えるパックを用意するようにと命じるのではないだろうか。小学校5,6年生の女の子がいる。2月の中旬だから、まだお年玉が5千円ほど残っている。女の子がデパートへ行く。明日はバレンタインデーである。チョコレートを買おう。他にゲームを買う予定があるから、使えるお金は限られている。女の子が5百円の袋をみつける。これなら買える。明日、パパにプレゼントしよう。小林さんなら、そういう絵を思い浮かべるのではないか。ふと、そんな想像をした。