Takepuのブログ

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税務総局声明の謎

2011-08-19 02:35:16 | 時事
中国税務総局が8月15日に出した「2011年47号」すなわち「個人所得税徴収修正に関する若干の問題についての公告」が偽物である、との声明について、頼りの香港紙は、16日付の紙面では求められるような言及がなかった。ただ、ネットを検索すると、(当たり前だが)話題になっていることは確かで、いくつかの問題を考えるヒントは得られた。

幻の「47号」公告は、個人所得税法上の年末ボーナスの課税問題の矛盾をただす内容らしい。「1元余計に多くボーナスをもらえば、所得税を2万元余計に払わなければならない」という情勢を正す措置がとられる、というような内容らしい。累進課税の考え方で、一定の金額を超えると損をするラインが存在するらしく、そのような弊害を正す措置をとる、と「偽公告」は告げていたという。

第一財経日報の取材に対して、何人かの専門家は、「確かに指摘されるような税制上の問題点は存在する」「個人所得税の改革は進行中で、技術的な誤差はあり、改革の中で正していかなければならない。ただ今回の税法改革の中で修正されるものではない」などと答えている。実際、12日の新華社の取材に対して税務当局者は、年末ボーナスの課税問題について改革を行うとの考えはない、と回答しているという。

はじまりは13日の広州日報のA10面に「年末にボーナスへの課税方法が変わり、多くボーナスをもらって結局課税で損をする、という状況が改善される。9月1日から実施される」と解説付きで掲載されてからのようだ。北京晩報(夕刊紙)にも似たような記事が載ったが、北京晩報は「広州日報を引用したものだ」という。いずれも「近く税務総局が発表する」としている。これを受け、中央電視台(テレビ局)や中央広播電台(ラジオ局)も報じ始めたという。そして一日おいて15日、税務総局が打ち消しの声明を出すことになる。

とっかかりの広州日報が疑わしいが、ニュースソースについては口をつぐんでいるようだ。広州日報のサイトで検索すると当日の新聞のPDF版を見ることができる。問題の記事は右端上部のようだ。白く塗りつぶされていて、もう見られなくなっている。

「公告」の中身は突拍子もないものではなく、きわめて自然な内容で、中国の権威ある多くのメディアも納得しだまされたらしい。

ということで、「何者かが税務総局の名を盗用して……」という税務総局の声明の、「何者か」が誰なのか問題になってくる。中央電視台のキャスターのツイッターで多くの人々がこの問題をつぶやく中で、「何者か」は「当局のどこか」と同じなのではないか、との声が上がる。そうでなければ、多くのマスコミが「公告は税務総局のものだ」と信じるわけがない、としている。

推測するに、個人所得税法上の問題点を解決すべく、税務総局内部で検討されていた草案が流出したのではないか? あるいは、実際に公布される直前の段階で、何らかの反対が入り日の目を見なくなった素案で、作成作業を進めていた若き官僚が反発、一部新聞を通じて素案を意図的にリークしたのではないか。それゆえ、「声明」でも「何者か(有人)」と犯人を特定するような表現をしているのではないか。

ここで言えるのは、中国の省庁が、法制上の問題点をきちんと解決する態度をとれていないこと、それに対する内部の突き上げまであること、職務上に知り得た情報を、容易に流すほど公務員の士気が低下しているということ……などが考えられる。明らかに政権末期、体制末期なのではないか。


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