Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

ユニバ女子サッカー日中戦

2011-08-22 15:19:39 | 時事
中国広東省深センで開かれているユニバーシアードの女子サッカー決勝で21日、日本と中国が当たり、中国が延長で2-1で18年ぶりの優勝を果たした。スタジアムのチケットは売り切れ、ネット配信の中国CCTVテレビで見た限りでも5万人ぐらい入っていたのでは? 日本がボールを持つと「ブーッ」と地響きのようにブーイングがすごいし。ワールドカップを制した「なでしこ」の系統の日本女子に勝った! ということで、もう少し大騒ぎしているのかと思ったら、中国メディアは結構冷ややかだ。

上の写真が22日付人民日報1面。下の方に文字だけ「ユニバ中国女子サッカー奪冠」と触れている。終面の運動面では大きな写真があるが、女子サッカーだけの記事ではない。

スポーツを通じた教育の必要性を説いている。と、いろいろ見ていたら、大学生の運動選手か、運動選手が大学生なのか、と中国の競技人口の底の浅さを指摘し、手放しでは喜べない、との論調が目立つ。

その一つ、湖南日報の運動面を見ると、下の方に小さく女子サッカー優勝の記事があるが、その左側、つまり本記原稿は「女子サッカーが勝利しても飢えを満たしてはくれない」で、この原稿の方が優先的にレイアウトされているといっていい。

内容は、
「学生チーム、といっても、7人はフル代表か元フル代表で、そのうち2人はフル代表の主力だ。決勝のスタメンのうち、中国側は1989年以前に生まれた選手が8人、日本側はすべて89年以降に生まれた選手だ。フル代表の選手をユニバチームに派遣するのは、「大を以て小を打つ」になってしまうが、中国サッカー界の底辺がきわめて脆弱で、特に女子サッカー人口は少ないので、仕方がない。純粋な大学生をそろえたチームにするのは不可能で、便宜的に大会のために大学生籍をとったプロ選手を呼ばなければならなかった」と振り返っている。
そして、
「今回、中国女子サッカーの勝利は、絵に描いた餅であり、飢えを癒やすことはできない。一時の勝利で、日本サッカーとの溝を埋めることはできず、中国サッカーは20年前からの負債を抱え続けている。
サッカーというスポーツは、きょうあすに収穫を得られるものではない。日本や韓国は数十年も発展しつづけて今のレベルに至った。1978年、日本でサッカーが授業のカリキュラムに組まれてから、サッカーは学校の体育の重要な科目となり、結果として日本サッカーが全面的に発展することになった。ユニバの経験を通じて、数がなければ質を語ることはできない、(サッカー)人口がなければ才能を語ることはできない、日韓の青少年サッカーと学校活動での育成の経験を学び、多くの子供に小さいときからボールに触れさせて、さらに多くの選手をまず学校で育て、その後専門的なチームで成長させる事ができれば、中国学校サッカーが真の才能の揺りかごになるだろう」と、言っていることはきわめてまともだ。
やや学校スポーツを強調し過ぎる嫌いはあるが。日本の場合は体育でサッカーを取り入れたからサッカーが強くなったというより、地域で地道にスポーツ少年団などの活動を続け、その組織とネットワークが広がり、多くの子供たちがサッカーに触れられるようになったからだろう。野球も同様にリトルリーグから高校野球の甲子園大会を頂点に、子供たちがスポーツの真剣勝負をする場が整っているからだ。

ちなみに、ネット上でやっと見つけたユニバの中国女子サッカーチームのメンバー。最高年齢は1984年2月生まれだから、27歳と6カ月。

一応、ユニバの出場資格は:
●大会が開催される年の1月1日現在で17歳以上28歳未満
●かつ、大学または大学院に在学中、もしくは大会の前年に大学または大学院を卒業した人
●プロ、アマ選手ともに出場可能

このBI・YAN(比の下に十、妍)という選手は本当に年齢制限ギリギリだし、本来の意味での大学生とは言えないだろう。ナショナルチームがよい成績を残すと、国民が喜んで愛国心を鼓舞することができるため、主催国でもあり、中国はどんな手を使ってでも金メダルの数を増やしたいのはわかる。ただ、18年前にユニバで優勝し、あるいは99年のW杯で準優勝してから、底辺を広げる努力をせず組織を放置し、結果としてサッカー人口が極めて少なくなってしまった。社会主義体制ゆえスポーツエリートのみを養成し、それ以外の国民の健康と参加型のスポーツ普及については、触れてこなかった。今更ながら、それに気がついてきているなら、まだ望みはあるか。日本が歩んだように数十年はかかると思うが。

教育にスポーツを用いない中国では、代表選手の素養の低さ、というか、サッカーやバスケットボールの試合でしばしば乱闘騒ぎが起きる。中国サッカーは八百長も問題となるなど、社会主義は成果主義でスポーツエリートだけを養成する。スポーツだけしていればいい環境下では、スポーツ馬鹿だけがのし上がり、心の教育が出来ていない結果、国際試合などで醜い乱闘騒ぎがおきるなど、精神面を制御できない場面をしばしば見る。フランス元代表の英雄、ジダンは二度と中国でサッカーの試合をしたくない、とまで言った。

いまの議論は学校スポーツの特性を履き違えていて、代表チームが強くなるために学校スポーツを取り上げている。本来はトップが強くなることを求めるための学校スポーツではなく、子供の健康、国民の健康のための大衆生涯スポーツの普及を考えない限り、体力のないもやしのような中国人を大量生産するだけだろう。