中国高速鉄道事故を起こした責任追及を進める中国マスコミへの規制について、暴動が全国的に広がることを中国当局は最も危惧している、と先日書いた。案の定、新疆ウイグル自治区の治安悪化を重く見た当局は、「厳打」態勢に入ることを決めたようだ。
香港紙「明報」によると、先日、大規模なウイグル族と漢族の衝突で死者を出し情勢不安となっている新疆ウイグル自治区の治安維持について、国家反テロ工作協調グループは反テロ工作会議を区都ウルムチで開催、孟建柱・公安部長兼同グループ長が胡錦濤国家主席ら中央指導者の「重要指示」を伝えたという。直ちに事件を解決し、暴力恐怖勢力に徹底的な打撃「厳打」を与えよとの内容だという。
孟公安部長は、新疆の各党委政府は民族分裂に反対し国家統一と安全のための任務を果たし、まじめに総括しろと訴えた。明報はこれを張春賢・新疆ウイグル自治区党委書記のウイグル懐柔政策がゆるすぎる、との批判を暗に示したものだ、と報じている。
張春賢書記は、「新疆王」とまで呼ばれ独裁体制を築いていた王楽泉前書記が、2010年4月、一連の新疆暴動の責任を取る形で更迭されたあとを受け就任、「最も開放的な書記」といわれ、胡錦濤主席の信任が厚いともいわれている。
一方で、孟建柱公安部長は、胡錦濤の政敵といわれる周永康・政治局常務委員・党中央政法委員会書記の下にいる公安部門のナンバー2。上海副市長も歴任しており、江沢民系だろう。権力闘争の匂いがプンプンしてくる。
「厳打」は、犯罪撲滅キャンペーンで、凶悪犯を逮捕するために町が戒厳状態のようになる。パトロールも徹底され、ホテルや繁華街の出入りなども厳重になる。ますます観光客が遠のくだろう。
明報によると、実際、観光客はすでに激減で、明報記者が滞在しているカシュガルのホテルは75室のうち20室のみが埋まり、300元(約4000円)の宿泊費も250元程度に値下げしているという。カシュガル観光局長によると、観光地のエイティガール寺院(2枚目の写真)も以前は一日平均800人前後の観光客が来たのに、4日、入場券は273枚しか売れず、香妃墓地(冒頭の写真)も1200人着ていたのが360人などと激減しており、700万元の損失で、観光客回復まで1ヶ月はかかるだろう、と見ているという。
「厳打」のために町が戒厳状態になっているうえに観光客が激減していては、夏の観光客かきいれ時に大変な損害だ。これも胡錦濤系の党委書記に押し付けられるのだろうか。