Takepuのブログ

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6カ国協議提案

2010-11-29 02:35:37 | 時事

中国は28日、「午後4時半(日本時間同5時半)から重要な情報を発表する」と予告、武大偉・朝鮮半島問題特別代表が会見し、12月上旬、北京で6カ国協議首席代表による緊急会合を提案すると伝えた。
中国にとっての重要情報はかならずしも他国にとっての重要情報でないことが多いが、このように事前予告し会見することは異例だろう。23日に発生した延坪島での北朝鮮軍砲撃と米韓軍事演習を巡り、中国政府が極めてあせっている様子が見て取れる。

日本などではどうして中国は北朝鮮の肩を持つのか、もっと厳しく当たるべきではないか、と考える人が多いだろう。北朝鮮は一方的に韓国に砲撃する恐ろしい国だ、とのイメージが膨らんでいるかもしれないが、彼らの言い分を聞いてみると一定の理由がある。北朝鮮はもちろん、中国も28日から始まった米韓軍事演習をこの上もなく憂慮している。この演習は「北朝鮮の脅威に対抗するため」行われるものだが、演習区域は、北朝鮮の先にある、突端に大連、旅順のある遼東半島や対岸の山東半島など中国沿海にも近い位置だ。北朝鮮だけでなく、中国も脅威に感じることは想像に難くない。そもそも中国にとって北朝鮮は、韓国など資本主義国から直接領土内に攻め入られない、同じ社会主義体制の盾、軍事的緩衝地帯の意味もあるのだ。

北朝鮮が延坪島事件を起こした後も、中国は断固とした態度を取らなかった。その理由はおそらく、上記にあげた、米韓演習を中国も脅威に感じていて、その反発から北朝鮮が起こした砲撃に一定の理解を示していたこと、この段階で北朝鮮を突き放すことで国際的孤立をさらに進め、ついには中国の言うことも聞かなくなってしまうことを憂慮したこと、があげられるだろう。
実際、砲撃事件の後の25日、朝鮮戦争で戦死した毛沢東主席の長男の毛岸英の追悼60周年記念式典が開かれ、北朝鮮の檜倉志願軍烈士陵園にある毛岸英陵墓に金正日、金正恩親子が花輪を贈ったと大々的に報じられた。砲撃事件が中朝の関係を微妙なものにすることもなく、強固な同盟関係を再確認したとみてよい。

それはなぜか。この期に及んで朝鮮戦争とか、毛沢東の戦死した長男とか、いかにも軍が喜びそうなことだ。中国指導部に、北朝鮮にシンパシーを抱き反米、反韓の考えを持つ軍を中心とした勢力がいるとみてよい。中国指導部内でもこの勢力を無視することができず、北朝鮮への態度もあいまいな形になっているのではないか。尖閣諸島問題を巡って軍部とのあつれきに疲弊した胡錦濤・温家宝コンビは、今度は北朝鮮問題を巡って軍部と駆け引きしなければならないということだ。中国が北朝鮮を使って韓国を攻撃させた、という見方は考えすぎで、ありえないが、攻撃に対して批判するどころか「よくやった」と考える勢力が中国指導部内にいることは確かだろう。

そういう中で発表された6カ国協議再開への動きだ。中国にとっては、このままでは勝手に飛んで行って、ますます言うことを聞かなくなってしまいそうな北朝鮮を取り込んで6カ国協議の席に着かせることで、議長国としての面子を保ち主導権を維持しようとしているのではないか。米韓、日米の軍事的同盟関係を牽制しようとしているのではないか。北朝鮮とつるんで中国までも国際協調の動きを見せないままでは「中国が北朝鮮を甘やかすからこのようなことになる」との日韓米の批判を受けてたたねばならない。そのような批判を打ち消すためにも、実現可能かどうかは別としても早めに手を打っておこう、というのが、今回の「重要情報発表」ではないか。

実際は協議に臨む前提条件である多くの問題が片付いておらず、韓国、日本、米国もこのまま中国の思惑通り会合に参加するとは思えない。