Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

反日デモ収束か

2010-11-02 06:30:48 | 時事
尖閣諸島の領有権を巡る日中のあつれきで、菅直人首相との日中首脳会談を直前になって温家宝総理がキャンセル、10分間の立ち話で済ませたあとの週末、中国ではどうやら大規模な反日デモは発生しなかったようだ。日本経済新聞によると、10月30日に寧夏回族自治区銀川や吉林省長春で小規模な集会はあったというが、大規模になる前に抑えきれたようだ。一部地域で不動産高騰や馬英九台湾総統への呼びかけなどのスローガンが見られ、反日デモが政府批判、ひいては民主化要求に変わるかもしれないと恐れた中国当局が、土日に授業を行い大学生を大学の外に出さないようにしたり、何度もデモ抑止を求めるなどの対策が功を奏したのだろう。あるいはロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を視察し、その行方を見守ろうとしているのかもしれない。

中国の媒体は、デモ低調化を進めるため触れていないが、もともと尖閣諸島問題を先鋭的に扱ってきた香港の媒体の一部などでは、11月1日に浙江省温州で反日デモが計画されていたが中止になった、と報じている。ニュースソースはいずれも日本の駐上海総領事館の情報のようだ。写真は英国のBBCの中文版だが、香港テレビや亜視テレビなどでも短行で同様に報じている。これに対して、名古屋で反中デモが起きた、と報じた媒体もある。香港では日本の右翼のデモに抗議した中国側の人民の行動、という構図を作りたいのか、複数のメディアが名古屋でのデモを報じている。集会やデモの自由のある日本と、中国とはデモの意味が違うことを意識的に棚上げして報じている。
ハノイで温総理が菅首相を袖にして、前原誠司外相に対して攻撃をしかけ一定の効果が出たこと、民主党が12月に訪中団を計画していると発表したこと、11月中旬に横浜で開かれるAPECに胡錦濤国家主席(党総書記)が出席すること、などから、日中の軋轢を高めることをやめるべきだ、という時期に入っているのだろう。デモをしようとしていた民衆も身の危険を感じ始めたのではないか。ただ、11月8日に広州で開催予定のアジア大会の男子サッカー日中戦で、示威行動を計画している、との報道もある。

尖閣諸島問題では、日本側が海保船から漁船が衝突した際の7分間に編集したビデオを一部国会議員に限定的に公開したが、未編集のすべてを公開しておらず恣意的に編集されては原因を特定できない、公開して中国側にも中国漁船に非があることをアピールすべきだ、との論調があるが、中国側はまったく意に介していない。

おそらく、そもそも酒に酔った一方的な愛国心に燃えた船長があとさき考えずに衝突させた、というのは中国側も実は認識していて、この船長拘束事件をきっかけに、尖閣諸島問題を日中に存在する領土問題として世界にアピールする目的を果たせればよかっただけだ。
1日、中国外交部の馬朝旭・報道局長は定例記者会見で、「(どちらが先にぶつかったかが問われているわけではなく)日本の海上保安庁の巡視船が(中国の領海である)釣魚島海域で中国漁船に干渉し、取り囲み拘束したことが違法であり、中国の主権と中国漁民の正当な権利を侵犯している。いわゆるビデオがこの事実の真相を変えるものではなく、日本の違法行為を隠すことはできない」と答え、取り付く島もない。仮にビデオを全面公開して中国漁船側の衝突行為が明らかになったとしても、中国側は一切すっとぼけて、自民党など野党が主張しているような効果が得られるとは思えない。
もちろん、ビデオの内容については僕も見てみたいが、日中の軋轢を解決させる手段だとは考えないほうがいい。