Takepuのブログ

中国旅行記とか、日ごろ思ったことなどを書きたいと思います

尖閣ビデオ流出告白

2010-11-11 03:14:40 | 時事
神戸海上保安部の43歳の航海士が、尖閣沖漁船衝突事故のビデオ流出を「自分がやった」と告白した問題。海保には「罪を問わないでくれ」などとの電話がかりまくっているとのことだが、余計なお世話なのではないのか。仮にも国家公務員であり、海を守るという海上保安庁だ。憂国の気持ちからこのビデオを公開しようとしたのなら、生半可な気持ちではなく自らの職を賭してでも、との覚悟はできていたはずだ。国家公務員には守秘義務がある。それを承知の上での行為だろう。にもかかわらず、もし今でも海保の職にすがろうとしているとしたら、ビデオを公開した志さえ疑わしい。

警視庁に聴取されたこの航海士は、とりあえず一度逮捕されるだろう。ただ、データをユーチューブに送ったとされる神戸の漫画喫茶のビデオの画像が不鮮明で、この航海士がPCを扱っている様子が確認できないのなら、自供だけで公判維持は無理だ。公開されたビデオが機密だと判断されれば公務員法の守秘義務違反にも問われるだろう。ただ研修資料名目でビデオは海保内のあちこちに出回っているようで、この航海士が「極秘資料とは思わなかった」と証言するなどしたら、守秘義務違反に問えないかもしれない。

有罪にはしにくいし、そのまえに起訴するのも難しい。証拠不十分で不起訴か起訴猶予になるのでは。ただ、国家公務員が守秘義務を犯したことは問題であり、懲戒免職処分は免れないのではないか。

映画「海猿」とか見てちょっと勘違いして調子こいてるんじゃないか。自衛隊や海保や警察は国を守る建前から、命令に絶対なのではないのか。国を憂いて個人の判断で勝手に国家機密を漏洩するなど、ある意味、日本の国家権力のヒエラルヒーに対する冒涜だ。国家システムとして公務員がそのシステムに反抗するとすれば、罰されるのは当たり前だろう。

以前から述べているように、衝突した漁船の中国人船長を釈放したのも、中国に屈したという簡単な構図なのではなく、次代の中国の指導者の人事問題をにらんだ非常に高度な判断に基づいたもののはずだ。外交とは一海保職員がチープな正義感にかられて勝手に突っ走って判断して済むような問題ではない。情状酌量の余地はない。この構図は5・15事件や2・26事件の青年将校の発想とある意味同じだ。きわめて危険だ。

もうひとつ興味深く思っているのは、ビデオ映像をテレビ局や新聞社、週刊誌に持ち込まないで、ユーチューブで自らが公開したことだ。さまざまなところで言われているように、テレビ局はともかく新聞社などに、もしこの画像が持ち込まれたとしたら、44分全部は公開されなかったろう。新聞はどこかのカットを数枚静止画で載せておしまい。そう考えて、あるいはあまり考えなかったかもしれないが、結局、自らユーチューブに乗せて発信した。もちろん、ネタを報道機関に提供したら、それが報道する価値があるのか報道機関が判断し、もし発表後にトラブルが起きたら、もちろん報道機関がその責任を負う。今回、自らユーチューブにアップしたことで、責任はこの航海士が取らなければならない。
そう。ニュースはもう自ら発信できる時代なのだ。もちろん、画像なりニュースのネタなどの加工の仕方はテレビ局や新聞社のほうが玄人なのだろうが、そもそもそのような小手先のテクニックなど必要としない、でかいネタならば、自らユーチューブなりブログなりで公開、発信すればよい。ただ日本のユーチューブの動画を見ていると、テレビ画像を落として載せているような安易なものが多い。自分で動画を撮って載せればいいのに。その動画の見せ方、切り取り方が課題になってくるはずだ。

アメリカでは莫大な金がかかる調査報道を新聞社が嫌って、退社した記者たちがNPOを結成して調査報道を行い、新聞社などに売り込むような動きも出てきているという。今回の事件で考えられるのは、報道機関の位置づけに大きな転換期が来ているのではないか、ということだ。