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「赴任地に行く甥のため叔母の郎女歌を贈れり(大伴宿禰家持、天平十八年閏七月ノチノフミツキ、越中国コシノミチナカノクニの守カミに任マけられ、即ち七月に任所マケドコロに赴ユく。時に姑ヲハ大伴坂上郎女が家持に贈れる歌二首)」
「草枕旅ゆく君を幸サキくあれと斎瓮イハヒヘ据ゑつ吾アが床の辺ベに(#17.3927)」
「草枕旅ゆくあなたに幸あれと斎瓮イハヒヘ据える家の床下()」
「今のごと恋しく君が思ほえば如何にかも為むするすべの無さ(#17.3928)」
「今のよう恋しくあなたを思っても何かできるかするすべはない()」
「旅に去イにし君しも継ぎて夢ユメに見ゆ吾が片恋の繁ければかも(また越中国に贈る歌二首 3929)」
「旅に出たあなたを今も夢に見るわたしの思いが強いからかも()」
「道の中国つ御神は旅ゆきもし知らぬ君を恵みたまはな(3930)」
「道中は国の神々旅をするなれないあなたにお目をかけてね()」
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「『浮浪児』は八首の歌から成り立てる七つに孤児や浮浪児が出る()」
「黒パンの屑ちらかれる明るさに孤児は口あけ眠れる始末()」
「地下道で浮浪児帽子に小雀をいれて自慢すひかりあつめて()」
「浮浪児が大根抜きし穴だろう明るくふかく陽があつまれる()」
「孤児の眼に寒い夕焼け燃える間は小鳥なんかにすぐになるなよ()」
「ニンジンの種子を吹きはこぶ風だからわれと夕陽と孤児をつなげり(最後のところで順番を逆にした)」
「寺山の孤児浮浪児が何ならん絶望よりも希望が見える()」