暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

バカンス ’12; (21)テント村のパンケーキ大会

2012年10月29日 03時36分09秒 | 日常


二年前にオーストリアの別の村でキャンプし周りの山々を歩いたときに拠点にしたのは自分達も会員であるNKBV(オランダ山岳連盟)のその年の拠点の一つだったからで、そこでは同年輩のオランダ人のグループといるという利点があったことだ。 子供達がまだ小さいときにはオーストリアのカリンチア州で子供が中心になる、時には大人にとってはいささか退屈なバカンスを過ごしたことがあるけれど、今は子供達もうちを出る年齢になると我々夫婦が一緒に楽しめる山歩きに加えて子どもたちも参加できる可能性を残しつつ、どちらかというと年寄り向きの山歩きを目的としたバカンスのキャンプ地にしたのだった。 

その前年には夫婦二人だけで車を駆ってフランス、スイス、オーストリアと2週間半のバカンスで実質10日あまりで200kmほどを歩いていたこともあり、そこで歩き残したスイス、オーストリアの氷河のあたりの山歩きを別の場所でやってみようという計画をたてていたら都合よく今年はオランダ山岳連盟のキャンプ地をインターネットのサイトで見つけたのだった。 二年前に知り合った人たちも何人かこのキャンプに来ていて毎日夕食後8時ごろから、詰めれば3,40人は収容できるその前と同じ連盟のテントでその日の情報、報告、経験などをコーヒー、紅茶を手に意見交換しつつおしゃべりをし、それぞれの計画などを2時間ほどそれぞれ勝手に喋りあうという慣習がある。 それには別段参加する義務はないのだがこういうところでの色々な情報交換は何かと役に足つので疲れていなければ大概自分のマグカップと折りたたみ椅子を持ってここにくる。 

それぞれの都合で毎日同じメンバーが来るとも限らず、それでも何日か接しているとだれとも打ち解けて心安くなるのは自然の成り行きだ。 またそういう時にはこの地に来ていない別の会員のことも別々に知っていたりしてそこで共通の話題繋がるということもある。 こどもたちも自分達と同じような年頃の青年たちと混ざりその場の大人にも混じってそれぞれ自分達の興味の任せるままに会話を進めているという具合だ。 自分は名前がなかなか覚えられないので顔つきと話した内容からそれが誰だったかということを後から確認していくのだが前回、二年前の世話役はかなり積極的にグループをまとめて小さなイベントをいくつか組織していたけれど今回の年寄りはあまり活発ではなく温和に皆に混じる程度だったがただ一つ、何人かの親と子供達が一緒に筏で川下りするイベントを催したようだった。 そのときにはうちの子供達もそれに加わり、我々はどこかのコースを歩く、というようなことをした。 世話役といってもそれぞれ会員間のボランティアであってそれぞれが特別の義務もなく皆自己責任で集まっているのだから大抵自然にその場の成り行きでイベントが決まる、という性格ののもなのだ。

ある日の晩、日頃は8時から集まるところを7時からにして、それぞれ山歩きから帰ってきてシャワーを浴びたりしてサッパリしてからそれぞれが自分のパンケーキをここで作って喰おう、という企画をたてた。 パンケーキはオランダでもっとも人気のある食いものかもしれない。 小麦粉を溶いて卵を落として混ぜ、それをバターを溶かしたフライパンで焼く、という甚だ簡単なものなのだがそれに加えるのに様々なバリエーションがある。 だれもその素だけのものを喰うわけでもなく、ハチミツかカラメルの蜜、細かい粉砂糖をかけたものが一番簡単なものだろう。 それにレモン汁を垂らすのもいい。 オランダ人はこどものころからそういうもので育っているから大人になってもそれで満足するものが多いのだが、それにリンゴや干し葡萄を混ぜたりするのもある。 時々うちでも食事の代わりにするのがパンケーキにハムとチーズを乗せて食うものだ。 カリカリに焼いたベーコンをハムの代わりに乗せるものもいる。 ベーコンを炒めたあとに出た脂で玉葱を柔らかく炒めてそれも乗せるのも旨い。 自分の好みはベーコン、しんなりした玉葱の上にチーズを乗せて熱でとろっと溶かせてからパンケーキをカーペットのように巻いて一口づつ切ってビールで喰うというものだ。 

デザートのパンケーキとしてはバナナやリンゴ、苺にマンゴなどを乗せてホイップクリームをかけたものがいい。これにはイタリアの甘いデザートワインがあうかもしれない。 こういうバリエーションは大抵世界中にあるのだからオランダだからパネンクックというだけでフランスではクレープだし日本になればお好み焼きという粉物の部類に入る。

ここはキャンプ場だから家で作るのとは大分勝手が違うから、と皆言い訳がましく小さなガスコンロの上で慣れない手つきで焼いている。 こういう場合は男がしゃしゃりでて粉大名となってフライパンを動かしているのだが自分は家人と子供達にパンケーキはまかせテントの中をうろうろとあちこちを眺めていた。 一年に一度するかしないかというお好み焼きの場合は自分が采配を振って焼くけど一年で4,5回はするパンケーキの食事のときは一切何もしない。 この日はここで食事をする、ということになっていたから7,8家族が集まっただろうか。 こういう場合には一人で来ることもなく、また夫婦だけもなく大抵は2,3人のこどもも一緒の家族単位で、この晩はテントの中には30人弱集まってテントの中は甘いバターの焼ける匂いが満ちて賑やかなものだった。 食後はいつもの集まりとなり、コーヒーや紅茶ですごしたあと、自分は近くのスーパーで見つけた松の香りのついたこのあたりのシュナップスを振舞った。 これが旨いと言ったのはこのうち二人だけで一人は17の若造とあとは30半ばの主婦だけだった。 それでも勧めると旨いと言わなくとも壜はあちこちに移動して2時間ほどのあいだに700mlほどの壜が空になっていた。