暇つぶし日記

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潜水服は蝶の夢を見る (2007);観た映画、Oct.  '12

2012年10月13日 01時33分50秒 | 見る
邦題;  潜水服は蝶の夢を見る (2007)

原題;  LE SCAPHANDRE ET LE PAPILLON
英題;  THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY

112分

製作国  フランス/アメリカ

監督:  ジュリアン・シュナーベル
製作:  キャスリーン・ケネディ 、 ジョン・キリク
製作総指揮: ジム・レムリー、 ピエール・グルンステイン
原作:  ジャン=ドミニク・ボビー   『潜水服は蝶の夢を見る』(講談社刊)
脚本:  ロナルド・ハーウッド
撮影:  ヤヌス・カミンスキー
音楽:  ポール・カンテロン

出演:
マチュー・アマルリック     ジャン=ドミニク・ボビー
エマニュエル・セニエ      セリーヌ・デスムーラン
マリ=ジョゼ・クローズ     アンリエット・デュラン
アンヌ・コンシニ        クロード
パトリック・シェネ        ルパージュ医師
ニエル・アレストリュプ      ルッサン
オラツ・ロペス・ヘルメンディア   マリー・ロペス
ジャン=ピエール・カッセル    リュシアン神父/店主
イザック・ド・バンコレ       ローラン
エマ・ドゥ・コーヌ        ウジェニー
マリナ・ハンズ         ジョゼフィーヌ
マックス・フォン・シドー      パピノ

42歳という働き盛りに突然の病に倒れ、身体の自由を奪われてしまったELLEの元編集長ジャン=ドミニク・ボビーが、全身の中で唯一動く左目の瞬きだけで綴った奇跡の自伝ベストセラーを映画化した感動ドラマ。監督は「夜になるまえに」のジュリアン・シュナーベル。主演は「キングス&クイーン」「ミュンヘン」のマチュー・アマルリック。

雑誌ELLEの名編集長として人生を謳歌していたジャン=ドミニク・ボビーは、42歳の時、ドライブ中に突然脳梗塞で倒れてしまう。その後、病室で目覚めた彼は、身体全体の自由を奪われた“ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)”となっていた。それはまるで重い潜水服を着せられたような状態だった。意識は鮮明なのにそのことを伝える術がなかった。絶望にうちひしがれるジャン=ドミニクだったが、やがて言語療法士アンリエットや理学療法士マリーらの協力で、左目の瞬きでコミュニケーションをとる方法を会得する。また一方で、今まで仕事にかこつけて顧みなかった家族の大切さを改めて思い知るのだった。そしてある日、彼は自伝を書こうと決意、編集者クロードの代筆でこれまでの帰らぬ日々や思い出をしたためていく。

以上が映画データベースの記述である。

深夜映画としてオランダ国営テレビにかかったものを観た。 なんとも映像が美しい映画で通常のカメラワークの域を遥かに超えている。 それは監督の画家としての出自にも由るのだろうし話の内容にも拠っているのだろうがかなりの場面の映像はストーリーを除いても美術館の暗い大きな空間でプロジェクターから投影される作品としても視力に耐ええるものである。 そのイメージは観る者の後々までストーリー性を除いても残るものであり「感動のドラマ」と評されるその標語を安っぽいものとみなし豊かな色とイメージの映像の中で我々の視覚の悦びに浸らしめる力を持つ。 だからストーリーが「感動」や「ドラマ」に向かうときにはその映像が通常の映画言語に戻り少々月並みに見える事ともなりその差がこの映像作家の資質を明確にするだろう。 確かに原作を読めばそのドラマや感動は直裁に読者に伝わり、いちいちアルファベットを辿るそのプロセスには気の遠くなるような作業が思いやられるのだがしかし一旦それが済むと出版に至ると主人公は世界的な雑誌の編集に携わっていた人間であるからその出版プロセスのノウハウは自家薬籠中の物であるからそのハンディキャップを克服して、、、というところでは月並みな「感動ドラマ」はあるのには違いないもののここでは月並みではない監督は月並みな「感動ドラマ」を承知しながら興味はそこには向いていないように見えるのだ。 それは映像をみれば理解できることでそこではストーリーを「ダシ」にして映像に向いた監督の姿が見えるに違いない。 それが映像表現ということである。


興味深いのはまっとうなフランス映画にみえることだ。 原作の舞台がフランスであり登場人物たちは皆フランス人であることは当然ながらトーンが優れたフランス映画となっていて、制作、監督などはアメリカ人であるもののフランス芸術映画に見える理由の多くは監督の画家という出自に拠っているからだろうと推測する。 データベースの記述を辿ってみるとデビュー作は自分の友人であった作家の伝記「バスキア BASQUIAT (1996)」とある。 当時ベルギーの国営テレビで放映されたものを観たのだがそのときアンディー・ウォーホールを演じたデヴィッド・ボウイのことを覚えているしその少々痛ましい話のことも思い出すのだが主人公との距離が近すぎるのか本作ほど感興を催す作ではなかったようだ。 

主演のマチュー・アマルリックは素晴らしいのだが途中の若いときの写真が出たときにロマン・ポランスキーかと見まがうほどで、しかし、本人をどこで観たのかなかなか思い出せなくてただ印象に残った演技ではアップに映った苦悩の表情だったのだが、ボンド映画の悪役と、スティーヴン・スピルバーグの「ミュンヘン(2005)」では情報屋として主役を遥かに凌ぐ存在感を示していたように思う。 それに本作で主人公の父親としてマックス・フォン・シドーが出たのは嬉しい驚きだった。