暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

アタメ (1989);観た映画、Nov. '11

2011年11月07日 17時17分40秒 | 見る

アタメ  (1989)

原題; ATAME!

102分

製作国 スペイン

ジャンル コメディ

惹句; 超変態的純愛物語……?映像の天才P・アルモドバル式スーパーH型ラブストーリー!

監督:    ペドロ・アルモドバル
脚本:    ペドロ・アルモドバル
撮影:    ホセ・ルイス・アルカイネ
編集:    ホセ・サルセド
音楽:    エンニオ・モリコーネ

出演:
ビクトリア・アブリル
アントニオ・バンデラス
ロレス・レオン
フランシスコ・ラバル
フリエタ・セラーノ

食事と休息を得るために、精神病院に入退院をくりかえす風がわりな男リッキー(バンデラス)。彼は結婚して、まともな生活に戻ることを決意する。彼が相手に選んだのは、ポルノ女優のマリーナ(アブリル)だった……。スペインの鬼才アルモドバルが、求愛を告げる男とそれに応じていく女の奇っ怪な心の移り変わりを描いた異色作。“アタメ”とはビデオ副題の意であり、ベッドに縛りつけられたマリーナがリッキーに向かって発する愛の言葉となる。

上記が映画データベースの記載である。 スコットランドの退屈なテレビ刑事ものシリーズの後、そのまま深夜映画としてベルギーの国営放送にかかったものを観た。 別段なにもテレビガイドには説明もなく初めの10分が面白くなければ切って屋根裏部屋に戻りネットで遊ぼうと思っていたらタイトルバックの色がけばけばしくそこに音楽としてエンリコ・モリコーネのクレジットがあったので面白いと思いソファーに沈んだのだが初めのテンポの速さと日頃聞きなれていないスペイン語をまくし立てるのをフラマン語の字幕で読むのはなかなか骨の折れることだったけれど若々しいアントニオ・バンデラスのやることといささかトウのたったポルノ女優が電動の車椅子で動き回る映画監督の下、B級映画の主役としてスタジオなどを絡ませ様々な事情を要領よく繋げて少々露骨とも思えるジョークを挿入するるところに興味が湧いて結局見続けてしまった。 家人は監督のアシスタントがまくし立てるどうでもいいお喋りのスペイン語がフラマン語の字幕となって出てくるのを読むのが嫌になってテレビの前から離れてしまった。 ここにもどうでもいい饒舌が意図して使われる南ヨーロッパ的なユーモアが見え、これに耐えられるかどうかが暇つぶしに耐えられるかどうかの一つの踏み絵にもなるのではないかと忖度する。

笑ったところが色々あるけれど先ず、この元ポルノ女優の仕事の後の自宅の風呂場のショットが笑わせる。 自分もあの玩具の潜水夫だったらいいのになあ、という笑いでもあり、この女優のことは一切知らないのだけれど上手くB級女優を演じたものだと後半になって思い直した。 本作に登場する車椅子監督のことを奇妙に思ったのだがデータベースの記述に接して、結局、アルモドバル監督の自虐的自己をない交ぜにした像なのだと知ってネット情報がいくつかの疑問を解くのに貢献するという時代の利点を実感した。 それにしてもバンデラスがその若さで特出していることを後の活躍に比して感じた。 彼の数年後のハリウッドもので知ることになるのだが、本作でいうとフランスの50年代、60年代の若いはぐれ者を題材にしたものを軽いスペイン製コメディーにしたらこうなった、というのだろうし、彼方此方でスリルもありバンデロスは当然としてもアブリルの少々年齢疲労をみせる演技がバンデロスの若さに対照されて本作ストーリーでの二人の落ち着く行く末が見えるようだ。 

1989年というのも今となってはもうかなり昔と言えるだろう。 ここに見える箱型のカセットウォークマンが当時のヒップなガジェットだったのだ。 北ヨーロッパに住んでいてあまり南のことは分からないのだが映画産業に関係しているという設定からなのだろうか、フィルムの色彩、住居の内装、それに人の話し方など各ショットで時代と場所に関してエキゾチックに見えるようでそれらが話を引き締める機能を意図せず果たしているようで興味深かった。

この種の映画で不可欠な要素はお色気、といってしまえばお色気という言葉はAV時代の今では通用しないアナクロニズムの骨頂なのだが、ここでのセックスシーンは秀でたものだ。 これには主役二人が9時間以上も撮影に格闘して挙句にラストテイクが採用され、その結果、名監督エリア・カザンをして、今までに観た映画で最も優れたセックスシーンだと言わせたらしいから映画を目指すものはよくよく本作を研究すべし、ということになるだろう。 その勉強振り、執着は作中の車椅子監督の研究ぶり、元ポルノ女優に電話で話しかける独白の陳腐さにも対応していて、こういうところがペドロ・アルモドバルが鬼才ともいわれる所以かもしれないと思った次第だ。