2006年 1月 28日 オランダ ライデン市
Lee Konitz (as)
Rein de Graaf (p) デュオ演奏会
ライデン市のジャズ同好会が主催して小会議室然とした広間にパイプ椅子を100席ほど並べたコンサートである。 これまでは文化補助金のおかげで無料, たとえ有料でも1000円以下のものが今回からは一人あたり1500円と格段の上昇率であるのにもかかわらず会場はほぼ満員となり120ほどの聴衆を得てこの日、スタンダードを中心にしたプログラムは始まった。 30歳以下の聴衆は10%程度でありこのアルト奏者の息の長い人気を示すものだがあちらこちらに散見する若者はこのアルトを既に聞いているように見えた。
ピアノは長年にわたり内外の数々のジャズメンとの共演経験の豊かな円熟したライン・デ グラーフであり今回のコニッツの演奏旅行には同行する模様だ。 このコンサートに2日先立つアムステルダムの演奏会では司会の役割も果たしていたが、そのときはコンサートホールの体裁であり、今回は市民会館の小講座風のこともありデ・グラーフはあくまで脇を固め、コニッツはその分、観客との距離もなく自身から話しかけ、冗談を交え興がのれば聴衆からのリクエストも募り、時には遊びで聴衆に単音のハミングをせがみそれにのせてブルース、即興のフレーズを繰り広げると言う場面もあり、2日前とは全く違った雰囲気を見せた。 初めの数曲の間にマウスピースがゆるく、座りが不安定でそれに見かねた客が差し出す紙片を巻いて調整する場面も見られたが、これも互いに勝って知った聴衆であり、これが一層この日の演奏を自然なものに持っていく助けになったのかもしれない。
曲目はスタンダードが主で下記の類であった。
The Way You Look Tonight
How Hight The Moon
Green Dolphine Street
How Deep Is The Ocean
Imoprovization (Free Piece)
Cherokey
Blues, Now The Time
What's New
Speak Low
Lover Man
このピアノのとのデュオではっきりしたのは2日前のコンサートでも見られたものの、アルトとピアノのスタイルの違いである。 二日前では異なった楽器のアンサンブル、デュオ、トリオ、カルテット、クインテットと多重の関係を紡いで様々な織物の色合いを現出していったわけだが、コニッツを除いていわゆる趣味のよいパーカー前後のバップであり、トリスターノは経由していないように感じられたが、ここではソロかデュオであり、その違いがこのデュオとしての演奏で一層明確になったようだ。 このデュオで美しくも変幻自在な、ドビュッシー、ラベルを思わせる両者の空間を行き来するコラボレーションはあとで尋ねたら純然たる即興であったと説明されたとはいえ、そういう違いが例えば97年12月のへーデン、メルドーとのブルーノート版ライブの二枚、特に「AloneTogether」と題されたアルバム、またギターのP.バーンスタインとP.ウッズのリズムセクションとの「Parallels](Chesky JD213)と題されたアルバムとくらべて顕著であった。
トリスターノに始り独自のアルトを探求して今、肉体的には往年の機動力は衰えたとはいえ一生を通じて精進、探求してきた精神、態度は何週間か前にも聴くことが出来たハンク・ジョーンズや他の多くのジャズメンたちと同じく感動するものであった。
(後記)
演奏の後、後片付けの会場の片隅でコニャック片手のコニッツ氏と立ち話で聴いたのは、本人はこの日、東京か大阪のブルーノートで演奏予定だとのつもりがエージェントの差配でオランダ小ツアーになったとのこと、氏にこの20年ほどの各国の印象を尋ねたら逆にオランダの状況も訊かれる事となり、その2日前の演奏会の後舞台のすそで氏と和やかに話していた若手アルトの例を挙げれば他の国に比べてオランダの基礎、専門教育の整っていることを言いその若者は4年ほど前に氏自身が審査の一員として選んだコンテストで17歳のグランプリだと教えられ、今回再会して一層の進歩と背丈の伸びに驚いたと言われ、さもありなんと納得したのだった。
Lee Konitz (as)
Rein de Graaf (p) デュオ演奏会
ライデン市のジャズ同好会が主催して小会議室然とした広間にパイプ椅子を100席ほど並べたコンサートである。 これまでは文化補助金のおかげで無料, たとえ有料でも1000円以下のものが今回からは一人あたり1500円と格段の上昇率であるのにもかかわらず会場はほぼ満員となり120ほどの聴衆を得てこの日、スタンダードを中心にしたプログラムは始まった。 30歳以下の聴衆は10%程度でありこのアルト奏者の息の長い人気を示すものだがあちらこちらに散見する若者はこのアルトを既に聞いているように見えた。
ピアノは長年にわたり内外の数々のジャズメンとの共演経験の豊かな円熟したライン・デ グラーフであり今回のコニッツの演奏旅行には同行する模様だ。 このコンサートに2日先立つアムステルダムの演奏会では司会の役割も果たしていたが、そのときはコンサートホールの体裁であり、今回は市民会館の小講座風のこともありデ・グラーフはあくまで脇を固め、コニッツはその分、観客との距離もなく自身から話しかけ、冗談を交え興がのれば聴衆からのリクエストも募り、時には遊びで聴衆に単音のハミングをせがみそれにのせてブルース、即興のフレーズを繰り広げると言う場面もあり、2日前とは全く違った雰囲気を見せた。 初めの数曲の間にマウスピースがゆるく、座りが不安定でそれに見かねた客が差し出す紙片を巻いて調整する場面も見られたが、これも互いに勝って知った聴衆であり、これが一層この日の演奏を自然なものに持っていく助けになったのかもしれない。
曲目はスタンダードが主で下記の類であった。
The Way You Look Tonight
How Hight The Moon
Green Dolphine Street
How Deep Is The Ocean
Imoprovization (Free Piece)
Cherokey
Blues, Now The Time
What's New
Speak Low
Lover Man
このピアノのとのデュオではっきりしたのは2日前のコンサートでも見られたものの、アルトとピアノのスタイルの違いである。 二日前では異なった楽器のアンサンブル、デュオ、トリオ、カルテット、クインテットと多重の関係を紡いで様々な織物の色合いを現出していったわけだが、コニッツを除いていわゆる趣味のよいパーカー前後のバップであり、トリスターノは経由していないように感じられたが、ここではソロかデュオであり、その違いがこのデュオとしての演奏で一層明確になったようだ。 このデュオで美しくも変幻自在な、ドビュッシー、ラベルを思わせる両者の空間を行き来するコラボレーションはあとで尋ねたら純然たる即興であったと説明されたとはいえ、そういう違いが例えば97年12月のへーデン、メルドーとのブルーノート版ライブの二枚、特に「AloneTogether」と題されたアルバム、またギターのP.バーンスタインとP.ウッズのリズムセクションとの「Parallels](Chesky JD213)と題されたアルバムとくらべて顕著であった。
トリスターノに始り独自のアルトを探求して今、肉体的には往年の機動力は衰えたとはいえ一生を通じて精進、探求してきた精神、態度は何週間か前にも聴くことが出来たハンク・ジョーンズや他の多くのジャズメンたちと同じく感動するものであった。
(後記)
演奏の後、後片付けの会場の片隅でコニャック片手のコニッツ氏と立ち話で聴いたのは、本人はこの日、東京か大阪のブルーノートで演奏予定だとのつもりがエージェントの差配でオランダ小ツアーになったとのこと、氏にこの20年ほどの各国の印象を尋ねたら逆にオランダの状況も訊かれる事となり、その2日前の演奏会の後舞台のすそで氏と和やかに話していた若手アルトの例を挙げれば他の国に比べてオランダの基礎、専門教育の整っていることを言いその若者は4年ほど前に氏自身が審査の一員として選んだコンテストで17歳のグランプリだと教えられ、今回再会して一層の進歩と背丈の伸びに驚いたと言われ、さもありなんと納得したのだった。