きょう、すこしお気に入りの春の服をきて、徒歩で15分の美容室へ行った。
しばらく椅子にすわっていると、スタッフのひとが近づいてきて、
「あの、予約は9日のようなんですが」
え、また間違えたのか。6日の10時って言ったつもりでスケジュール帳にも書いたのに。
「あしたの朝ってあいてませんか」というと、
申し訳なさそうに、
「担当のNは3月で退職しまして」
え・・・・・
・・・・・・・ しばらく絶句。
私「ご病気かなにかですか」
スタッフさん「いえ、病気ではないんですけど」
はぁ。 呆然としながらも明日の9時で他の担当者を予約して帰った。
帰り道。 ふわふわ歩いた。
Nさん。もう20年近く、毎月私の髪を切ってくれていた人。息子がうちにいたころ、高校生とか大学生のときは同じNさんに切ってもらっていた。
なんでも話した。
サーフィンをやっていたNさん。マウイ島の話もしたし、息子の話、老いていく親の話、短歌のこと、チェコのこと、インボイスのこと。息子の大学時代のオケのコンサートにも招待したことがある。
前から決まっていたら、先月予約を受けなかっただろう。葉書の一枚もない、というのはよっぽど急な事情だったんだろう。
さびしいな。
私の記憶や時間をNさんは覚えていてくれていた。こう書くとSDカードみたいだけれど、そういう機械的な記憶の保存ではなくて。どこからどの話をしても、「そうでしたよねぇ」といっしょに懐かしがってくれた。
いままで髪をきれいにしてくれてありがとう。 それから、私のこれまでのことを覚えていてくれて、楽しい時間を過ごさせてくれて、ありがとう。
もう会うことはないだろうけれど、元気でいてほしい。
さやうなら きれいな言葉だ雨の間のメヒシバの茎を風が梳きゆく 河野裕子『葦舟』
しばらく椅子にすわっていると、スタッフのひとが近づいてきて、
「あの、予約は9日のようなんですが」
え、また間違えたのか。6日の10時って言ったつもりでスケジュール帳にも書いたのに。
「あしたの朝ってあいてませんか」というと、
申し訳なさそうに、
「担当のNは3月で退職しまして」
え・・・・・
・・・・・・・ しばらく絶句。
私「ご病気かなにかですか」
スタッフさん「いえ、病気ではないんですけど」
はぁ。 呆然としながらも明日の9時で他の担当者を予約して帰った。
帰り道。 ふわふわ歩いた。
Nさん。もう20年近く、毎月私の髪を切ってくれていた人。息子がうちにいたころ、高校生とか大学生のときは同じNさんに切ってもらっていた。
なんでも話した。
サーフィンをやっていたNさん。マウイ島の話もしたし、息子の話、老いていく親の話、短歌のこと、チェコのこと、インボイスのこと。息子の大学時代のオケのコンサートにも招待したことがある。
前から決まっていたら、先月予約を受けなかっただろう。葉書の一枚もない、というのはよっぽど急な事情だったんだろう。
さびしいな。
私の記憶や時間をNさんは覚えていてくれていた。こう書くとSDカードみたいだけれど、そういう機械的な記憶の保存ではなくて。どこからどの話をしても、「そうでしたよねぇ」といっしょに懐かしがってくれた。
いままで髪をきれいにしてくれてありがとう。 それから、私のこれまでのことを覚えていてくれて、楽しい時間を過ごさせてくれて、ありがとう。
もう会うことはないだろうけれど、元気でいてほしい。
さやうなら きれいな言葉だ雨の間のメヒシバの茎を風が梳きゆく 河野裕子『葦舟』