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いつでも君のこと好きだったよ

お坊さんの話

2018-03-12 23:01:54 | 日記

 いまから25年くらい前、義父の母、要するに夫のおばあさんが亡くなったとき、お葬式が家でありました。

 

 そして、お通夜のとき、お経をあげたあと、お坊さんが私たちに向きなおってお話をされました。

 

 だいたいしか覚えていないのですが。

 

 とある村に大切な家族が死にそうになったときに、高名なお坊さんに助けてほしいとお願いにいった男がありました。お坊さんは男に「それでは、死者を出したことのない家に植えられた罌粟の実をもらってきたら、助けてあげましょう」と言いました。男の村にはどの家の庭にも罌粟が植えられてあり、「そんなことは簡単だ」と男は思って、罌粟の実をもらいに行きました。ところが、「死者を出したことのない」家がなかなか見つかりません。すべての家をたずねて歩きましたが、とうとう一軒もなかったのです。そして、男は気がついたのです。どの家にも死者を出した過去があって、いまの自分と同じ悲しみがあったことに。

 

 家族が亡くなる、ということはとても悲しくて大きな出来事なのですが、葬儀場で、斎場で、市役所の窓口で、社会保険事務所の窓口で、「死者をだした家」のひとをたくさん見かけました。亡くなった人にお化粧をして、棺にいれて、お焼香をして、お経を唱え、焼いて、骨を拾って、骨壺を抱いて、祭壇をしつらえて、籍を抜いて、保険証を返却して、印鑑登録カードに鋏を入れて、何枚も書類に亡くなった人の名前を書いて。

 

 そうして、その人がほんとうに死んでしまったということを、すこしずつ認めていくのかもしれません。

 

 お義母さんがいつもかぶっていたニット帽をもらってきました。いつも見えるようにリビングに置いています。

 

 

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