じいの徒然日記

内野聖陽さんにfall in loveしたじいのおバカな毎日を綴った日記

内野さんメモ

10/14~26 芭蕉通夜舟 東京公演
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10/25  映画「八犬伝」公開
11/22 映画「アングリースクワッド」公開

トロイアの女たち

2010-09-09 23:50:28 | 観劇記
9月8日マチネの観劇記です。

久しぶりのアトリエ観劇 しかも最前列……どーしてこんなところで運を使う という感じですが(苦笑)なかなか見応えのある舞台を肌で感じて充実した観劇になりました。あぁ~~終わった後は心にズッシリ、ちょっと重かったな~ でも、、、やっぱりアトリエという空間は好きですね~~板の香りと共に空間を覆っているアノ空気感が堪んない じいの中に蓄積して眠っている懐かしい感覚を刺激して心地いいのよね。

~あらすじ~

紀元前、ギリシャとの苛酷な戦争は終わった。トロイアはスパルタ王メネラウスの軍門に下った。ギリシャ軍の天幕の中には捕虜となった敗軍トロイアの女たちが収容されていた。その中に王妃ヘカベの姿もあった。女たちには奴隷としての運命が待ち受けている。ヘカベの娘カッサンドラ、予言者として評判の高かったカッサンドラも連れ去られて行く。さらに、ヘカベの息子ヘクトルの未亡人アンドラマケとその息子アスティアヌス。幼いアスティアヌスには死が宣告された。夫、息子、娘、そして孫までも・・・。ヘカベの憎しみはヘレネに向けられた。この苛酷な戦いは、ヘレネにその原因があった。メネラウスの后であったへレネは、なんとトロイア王プリアムの息子パリスと駆け落ちしたのである。そして今、のうのうとメネラウスの元に戻ろうとするヘレネ。ヘレネを殺すよう懇願するヘカベ。そこへ孫アスティアヌスの亡骸が・・・。メネラウスはヘレネの要求を拒み、祖国へヘレネを連れ去った。全ての希望を奪い去られたヘカベ。この時、すさまじい音とともに城壁が崩れ落ちた。あとはただ、隷属の日々の待ち受ける敵国へ向かうだけであった。(文学座HPより)

会場内、、、7段位だったかな~~いつもの感じに作られた客席ブロックが左右にそれぞれ同じようにあって、その真ん中に舞台がドドーンと作られていました。敗者たちが閉じ込められるに相応しい酸化鉄のような錆びた赤色が床に塗られていて、壊れた椅子や投げ出された靴や食器類などが散乱していて……と言っても床部分に思いっきり貼り付けられて一体化させてあるので動いたり芝居で使ったりということはないんですけどね 役者さんたちは手前の玄関付近(じいたち観客が入ってきたところ)と反対側の奥の扉から出入りしてて、途中に客席最上段からも出入りする場面があったり 左右どちらかが正面という感じではないので、置いてきぼりにされることもなく(苦笑)お芝居の世界を堪能できました ……あ、じいは今回端っこに近いところに座っていたのでこの人の表情が見たいのに被ってる人邪魔~~ みたいなところはあったけど でもね~~役者陣はさすが文学座!という方々ばかり。特にヘカベを演じられた倉野章子さんと伝令役のタルテュビオスを演じられた坂口芳貞さん。今回、衣装は現代っぽさが見えるドレスだったり靴だったりしたんだけど、セリフとして発せられる言葉の力と雰囲気に飲み込まれて古代世界に没入させられた感じでしたね~~まさに言霊というか、言葉によって目の前に作り出される世界に思いっきり引き込まれました。

先週にイリアスな世界を一度体験していたせいか、ものすご~~~く楽しめました 今回の作品は女性メインなので英雄陣は出てこないんだけど(ま、戦後の話だから死んでるわけで…)イリアスに出てくる人物の名前がセリフの中には出てくるので、ついつい池内君やら平さんやらの顔が浮かんじゃって もちろんアキレウスも出てきますよ~~セリフの中では……ね「アキレウスの墓」とか「アキレウスの息子」とか何度か出てくるので、その度に意味不明にドキッ 胸キュン になったことは……はい、否定しません 不謹慎なことを承知で申せば、敗者トロイアの女性たちを巡る処遇の中で、アキレウスの墓守をすることになった(後で殺されちゃうんだけど…)ヘカベの子……ヘカベは「敵の墓守をするために産んだわけじゃない」と抵抗していましたが、アキレウス様なら~~ 失礼しました ちょっと邪な部分も交えつつ、人物関係やトロイア戦争の中身を一通りは把握できていたので分かりやすかったですね~~ただ、やっぱり神サマ界と人間界、地理的な位置関係等々が確実に頭に入っていないので、引っかかる名前や地名がある度に「それ、誰だったっけな~~どんなエピソードがあったっけ?」「その地名、確か世界史にも出てきたけど記憶があやふや~~」と戸惑いつつ焦りつつ目の前の話にはついていかないといけないし……実はちょっと頭から湯気が出かかっていたのも本当だったり

今回の物語、、、てっきり“裏イリアス”的な話=城壁の中の物語なのかな~と思っていたら、トロイア戦争の後の話だったんですよね~~って、続々と送られてくる配布物を読まないじいがダメダメなんだけど しかも冒頭から「あの女のせい」という言葉があらゆる登場人物のセリフに散りばめられていたので、あの女=ヘレネがキーワード的存在なのかと思っていたら、結局そこまで中心に取り上げられていた感じはしなかったのでアレレ~と??? もちろん戦争や世間に翻弄された存在であり重要な役回りではあるんだけど、最初に考えていたのとは違うな~と思ってちょいとビックリ でした。

いや~~まさかね~~古代史が苦手なじい君(笑)が高校生の頃はスルーしていた三大悲劇作家の一人・エウリピデスの戯曲を観る日が来るなんてね これも道を踏み外した人生が豊かになったということだけど(笑)……そうですね~~やっぱり伝承文学というか口承文学というか、それに属するイリアスとは違った系統の作品だな~と思いました。さらに、悲劇の質が違う感じがしたんですよね~~シェイクスピア等々とも違うし、今の悲劇とも違う、もっと原始的な悲劇ってところかな 肉体的であったり精神的であったり、凄~~く生き物としての人間→ヒトの直接的な悲劇みたいなものを感じたというか。。。もっと後の時代になると、心の悲劇だったり状況的な悲劇だったり、もう少し「高度な」悲劇を描いているような気がするので。ま、そうは言っても見方によったら現代的な反戦テーマとして捉えたり、銃後の世界の女性論みたいなものとして論じることもできる描き方だったので、どーにでも調理できる素材ではあるな~と思いましたが。

じい的には、今風の価値観を持ち込んで味わうんじゃなくて……ま、トロイア→西洋と東洋の境界線に位置するので、文化や政治勢力や価値観の融合やぶつかり合いという面から見ても面白いとは思いましたが、一番はやっぱり目の前で描かれている世界をそのまんまストレートに捉えたいな~という感じかな もうね~~最初からどん底なのに、次々と救いようのない悲惨なことや残酷なことが積み重なっていく話なんですわ。囚われの身の女性たちがくじ引きで処遇を決められ、ある者は夜の相手に、ある者は奴隷に…と、まぁじいも女ですからね~~聞いてて良い気持ちはしないわけで ヘクトルの妻・アンドロマケが息子と引き離され、その息子はトロイアの城壁から突き落とされることになった時なんて、あまりに残酷で可哀想で見てられませんでしたわ それを決めたオデュッセウス、、、ゴメン 思わず「イリアス」の方に出演中のアノ顔が浮かんで(中の人に罪はないけど、憎々しいほどの頭脳派キャラが見事だったので)腹立たしくなっちゃったわ ただね~~別に「イリアス」でギリシャ軍の方に肩入れしていたわけではないけど(爆!)同じようなことをトロイアだってやってきているはずだと思うんですよね。もちろんギリシャはそうだし……それぞれの国に自由な市民社会が成立していたとしても、その社会は奴隷制の上に成り立っているわけだから、同じような思いをしてきた自国民がいるわけだし、更に言えば男女の差による違いもあるわけで、単純に可哀想だとも思えなくて。。。現代における善悪や常識の判断基準をとっくに超えている“異空間”なんだな~と思いながら見ていましたね~~ ただ、間違いなくそこにある喜怒哀楽の感情だけは普遍的なものであるというのも今回改めて思ったことデス

唯一綺麗なおべべ で出てきたヘレネ。トロイア戦争の元凶と言われ、トロイアを滅亡させたとヘカベから罵られ、裏切り者と元夫のメネラウスに責め立てられ……結局、石打ちの刑で処刑されることが決まってギリシャ本国に連行されていくところで退場なので彼女の身の上は??のままなんですよね~~殺されるor許されると諸説あるみたいですが、じいが見た感じでは生き延びたんじゃないかな~と。連れて行かれる前にメネラウスに色目を使ってて、メネラウスがこれまた役立たずというかヘタレっぽいキャラだったのでコロッといかれちゃいそうだし で、彼女がトロイアに来た理由で彼女の言い分は「美の女神アフロディテによってトロイア王子パリスと私は結ばれる運命にされていたから逆らえなかった」ということなんだけど、普通に聞けば神様のせいにしてまったく!ということになるけど、でも神サマ世界もまんざら嘘じゃなかった世界(特にフィクションの世界ではね~^^;)だからヘレネの言い分にも一理あるかも~みたいな それに、ヘレネの尻軽っぷりに呆れていたヘカベはアキレウスの息子の戦利品となる嫁のアンドロマケに対しては「これから生きることを考えなさい。新しい夫には従順に振る舞い、ヘクトルのことは忘れた方がいい」なんてことを言っているし、そんなことを言いつつ「戦争のある世界なら名誉や功績を残して死んだ方がよかった」と嘆くし、アンドロマケは「つつしみ深い妻として、外出は控え、家の者には噂話などは硬く禁じ…」と貞淑な妻であることを主張しながら「死は存在しなかったことと一緒だから」とヘカベの嘆きに反論するし……もうぅ~~一貫性のないあなたたちに嘆きたいのはこっちよっ と突っ込みたくなることもしばしば。でも、これが古代の世界なのかもしれないな~と思うところもあって、神サマ?運命??に振り回される人間が悲しいほどに滑稽な気がしてきて。。。しかも、神サマの存在が実在として見え隠れするところが何とも不思議な感覚というか、これが今の尺度では捉えきれない物語の本質なのかも

この夏、思いっきり紀元前の世界に浸かってみたい方には超オススメの演目ですぅ~~特にイリアスとの同時進行は尚おもしろいと思いますね~~ただ、確実に 多分 どっしり重た~~い気持ちになるので、できればもう1回イリアスで気分 する方がよろしいかと……
コメント (2)
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