「あしたは、天草の口があきますようぃ」
天草(てんぐさ)の口開けは漁村の重要な産業的行事の一つです。
布海苔、若布、天草等の海藻はすべて充分に成長するまで
その採取が禁じられていて、天草の解禁は四月下旬。
漁村中の女性が総出で、法螺貝の合図で一斉に海に入るのはとても見事。
朝、「とりごえさん」と言って外洋面に近い岩浜に行く。
海女達はもう海に入る服装で(白の肌着に白の腰巻き、白手拭いで髪を包む)
方々に十人くらいずつたき火を囲んでいる。
おばちゃんたちは丸々と太って頬もつやつや。
海中に突き出た大岩の上に上ってみていると、
浜のおばちゃん海女達が桶を抱えて渚に降り始めた。
岩影からは法螺貝を手に持った漁業組合の人が岩の上に立ち
左右をきっと見渡して貝を口に当てる。
おばちゃん海女達の蠢きは近くは鴎の群れのように、
遠くは白い鷺のように見える。
磯の浅瀬に腰まで浸って百人に余る海女達が一列に立ち並んだ。
合図と同時に一斉に泳ぎだして早くも飛沫を蹴り上げて潜り始める様は、
さながら水鳥の群れ。
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