昆布センセーション!
出汁をとったあとの昆布はどうか捨てないで。
出汁がら昆布の食べ方は佃煮だけじゃありません。
「昆布は山と海からつながる自然の恵み、だから昆布のことをもっと大切に思ってほしい」。
昆布の産地、北海道から昆布大使、松田真枝さんが登場。
ポップで楽しい出汁がら昆布料理を披露しますよ。
2019年の昆布は脱・フードロス!
さあ、みなさんご一緒に。
昆布を知ると、捨てるのがもったいなくなる。
想像してみてほしい。
この世から昆布がなくなったときのことを。
昆布の生産量の9割を占める北海道。
年々不漁が続き、昆布の価格は上昇している。
すでに天然の昆布は絶滅危惧種になりつつある。
自然破壊、漁師の高齢化や後継者不足など、漁獲量の減少は避けられない状況だ。
そもそも北海道で獲れていた昆布は、江戸時代に北前船で運ばれ、大阪、京都などを経て、鹿児島や沖縄まで届けられた。
昆布ロードが各地の食文化に与えた影響は計り知れない。
昆布なくして、私たちの食文化は語れないのだ!
昆布は無駄なところのないサステナブル・フード。
登場するのは、北海道で活躍する料理研究家の松田真枝さん。
2016年に昆布大使に就任して以来、各地の産地を訪ね、生産者たちと交流を続けている。
さらに北前船で運ばれた土地も訪ね歩き、そこで育まれた加工の技術や調理法、昆布を無駄にしない食べ方を学んできた。
あるとき、日高で拾い昆布漁を目の当たりにした。
荒れる海に漁師が腰まで浸かって、昆布を拾っていた情景が頭から離れないと言う。
「必死で獲った昆布は、手間ひまかけて加工される。それなのに、出汁をとったあとの昆布はカンタンに捨てていいのかなって」。
以来、出汁がら昆布を余すことなく食べ切る料理を編み出してきた。
曰く「昆布は軽い、腐らない、料理の味がアップする、魔法の食材。
捨てるところのないサステナブル・フードです」。
出汁がらになっても、カルシウムや繊維質が含まれ、グルタミン酸の効果で調理を工夫すれば減塩することだってできる。
よし、昆布の種類を知って、出汁をとることからはじめてみよう。
出汁昆布四天王と呼びたい。
出汁用に買い求めやすいのは、主に4種類。道南の“真昆布”、道北の“利尻昆布”、日高地方の“日高昆布(三石昆布)”、知床半島羅臼海岸の“羅臼昆布”、それぞれに天然と養殖があるけれど、天然は高価で希少なもの。
太平洋側では海が荒いため養殖栽培ができない日高昆布以外、天然と書いていなければほとんどは養殖の昆布だ。
まったり、ふんわり“真昆布”
日本一流通量が多く、出汁は上品でまろやか。
そのまったりとした味わいは、昔から大阪人にこよなく愛されてきた。
献上昆布として奉納された高品質な昆布として知られる。
凛とした、存在感の“利尻昆布”
硬くて出汁が濁りにくいので、すっきりした印象の出汁がとれる。
京料理や精進料理、とりわけ湯豆腐によく合う。
出汁をとった後は、より硬くなる傾向があるので、出汁がらを使うときは酢や梅干しを使うといい。
お手軽で使いやすい“日高昆布”
昆布の香りが強く、難しくなく使いやすい。
出汁昆布の中では煮えやすいので昆布巻きやおでんなど、煮物にも使えて具にもなる。
刻んで漬物に使うのもよし。
濃くて、しっかり“羅臼昆布”
コクのある濃い出汁がとれる。
味が濃いので、羅臼昆布だけでもしっかりした出汁になる。
柔らかい性質がある上、他の昆布より加工する手間が多いので、出汁がらは柔らかく使いやすい。
ただし、長く煮ると溶ける場合がある。
昆布のトランスフォーム
出汁がら昆布をストックしたら、出汁がらの相棒は梅干しです。
昆布を梅干しと一緒に煮ると、ふっくら&なめらかに。
出汁がら昆布と梅干しのおいしくなる関係。
出汁がら昆布を冷凍ストックしたら、梅干しを使った佃煮を鍋いっぱいにつくって常備菜に。
甘じょっぱい味に、ああ、ごはんが止まらない。
日本酒のアテにもたまらなく合いますから、もう一杯、ってなことにもね。
年末年始の疲れた胃腸には、おかゆと一緒がちょうどいい。
出汁がらを捨てるなんて、ほんとにもったいない。
おぼろ昆布、とろろ昆布を加工している 昆布屋さんに行ったとき、最初に昆布を酢に浸して柔らかくすると教えてもらいました。
今回、紹介するのは梅干しで硬い出汁がらを柔らかく食べる方法。
昔、中国で薬として珍重されていたという話をヒントに八角をひとかけら加えてみたら、ちょっとエスニックな甘い香り漂う佃煮ができ上がりました。
食物繊維で腸の働きを助ける昆布に、消化を助ける作用のある八角の組み合わせです。
もちろん、八角がなくても十分おいしくできますよ。
昆布と梅干しのしっとり佃煮
材料 (つくりやすい分量)
出汁がら昆布 | 120g |
---|---|
梅干し(大。塩分17%) | 2個 |
味醂 | 大さじ3と1/2 |
醤油 | 大さじ2 |
酒 | 大さじ2 |
八角 | ほんのひとかけら |
1炊くだけ
出汁がら昆布は、2cm角に切る。梅干しは種をとってちぎる。
鍋にすべての材料を入れて水600mlを注いで強火にかける。
沸騰したら中火に。蓋をして20~25分煮る。
昆布が柔らかくなったら蓋を取って中弱火
に、水分が煮詰まったら火を止める。
容器に入れて冷蔵庫で1週間保存可。
懐かしい味はいかが?
こっくりと甘い大根の煮物は、どこか懐かしいおばあちゃんの味。
ひと口食べると疲れがとれて、しみじみとした気持ちになるから不思議だ。
大根を炒めてから煮ると、大根独特の匂いが消えるので、いったん炒めてから水を注ぐ。
このひと手間をちゃんとかけると、あとは昆布の底力で自然とおいしくなる!
甘じょっぱいは、北海道スタンダード。
なので、今回は意識して、いつも北海道でつくっているレシピよりも砂糖を少し減らしています。
大根は味が染み込みやすいようにナタ切りにするのですが、今回は大根と昆布の大きさを揃えて、短冊切りに。
野菜の切り方を変えるだけで、ご馳走感が出てきました。
大根と出汁がら昆布の甘じょっぱい煮物
材料 (3〜4人分)
大根 | 10cm |
---|---|
出汁がら昆布 | 30~40g |
梅干し(大。塩分17%) | 1個 |
米酢またはサラダ油 | 大さじ1と1/2 |
砂糖 | 大さじ2/3 |
味醂 | 大さじ1 |
醤油 | 大さじ1 |
かつお節 (小袋) | 1パック |
1大根を炒める
大根は皮をむいて3㎝ほどの短冊に切る。
かつお節は袋の上からもんで粉々にする。出汁がら昆布は大きなままならば、大根に合わせて短冊に切る。
切って冷凍したものならば、そのまま使ってOK。
フライパンに大根を入れ、米油を回しかけて混ぜ、中火で炒める。
大根に油が回ったら砂糖を入れて混ぜ、全体を馴染ませる。
2梅干しと一緒にじっくり煮る
①の鍋に出汁がら昆布と梅干し、かぶるくらいの水400ml、味醂、醤油、かつお節を入れて中火にかけ、沸騰したら蓋をして中弱火で20~25分煮る。
大根に火が通ったら、蓋を取り、さらに水分を飛ばす。
肉と昆布で、なんだかいい感じ。
出汁がら昆布を梅干しと一緒にたたいて、極細のみじん切りに。
挽き肉に混ぜた昆布の粒々感でボリュームアップ。
これ、冷めても味がしみておいしいので、お弁当にもお薦め。
昆布と肉をしっかり噛むことで、消化もよくなり、体のバランスもよくなる。
出汁がら昆布を食べるって、体にとってもいいんです。
単純にミートボールに出汁がら昆布入れたら、おいしいだろうなあと思って考えたレシピです。
やってみたら、料理教室で大評判でした。
出汁がらのみじん切りはぬめりで滑るのですが、梅干しと一緒に刻むとうまくいきます。
なるべく細かく刻んで挽き肉と混ぜたときに一体感を。
隠し味のマヨネーズでほんの少しコクをプラスしてます。
出汁がら昆布 in ミートボール
材料 (2人分)
出汁がら昆布 | 20~25g |
---|---|
梅干し(種をとって) | 20g |
豚挽き肉 | 150g |
粗塩 | ひとつまみ |
マヨネーズ | 小さじ2 |
黒胡椒 | 適量 |
米油、またはサラダ油 | 小さじ1と1/2 |
スナップえんどう | 4~5本 |
1出汁がら昆布、梅干し、肉を練る
出汁がら昆布と梅干しを一緒に細かいみじん切りに。
挽き肉をボウルに入れ塩をふり、粘りが出るまで練る。出汁がら昆布と梅干し、マヨネーズ、黒胡椒を入れてさらに練ったら、6等分にして丸める。
2しっとり蒸し焼きにする
フライパンに米油をひき、①を並べ、中弱火にかける。焼き色がついたらひっくり返し、スナップえんどうを加えて焼く。
両面が焼けたら水大さじ2(または昆布水)を加えて蓋をし、蒸し焼きにする。
教える人
松田 真枝
北海道生まれ、北海道在住。料理研究家。札幌で北海道の食材を使ったイタリア料理教室「クチナイト」を主宰。つくりやすいレシピが評判で、北海道の食の伝え手として、地元のメディアやイベントで活躍。2016年日本昆布協会昆布大使に任命されたことを機に、えりも町、羅臼町、根室市など北海道中の産地を巡り、さらに富山、大阪、沖縄など、北海道から昆布が運ばれた「昆布ロード」の中継地点を訪ねる。各地の食文化と結びついた昆布食の聞き書きを続けている。1月にはパリで開催中の「ジャポニスム2018」で、昆布出汁のプレゼンテーションを行う予定。
文:神吉佳奈子 写真:長野陽一
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