職場から帰宅して
玄関を空けると
ぷーんと
い草の匂いがして来た
あっ畳替えしたんだ
畳表はい草である
まだ新しいので
色も青い
女房と畳は新しいものに限る
なんていうことわざがあったっけ
でも
畳はそれぞれの部屋で
それぞれの家庭の
日々の暮らしを
知っている
日々の家族の
暮らしの匂いだったり
汚れだったり
傷だったり
日だまりの色だったりする
お父さんが
酔って寝転がったり
お母さんが
涙をこぼしたり
お姉ちゃんが
足の指に
マニキュワを塗って
たらりとこぼしたり
家族がすき焼きを囲んだ
幸福の溜まり場だったりするんだ
古い畳だからこそ
知っている家族の
歴史がそこにある
その畳が替るのは
なんだか切ない
新しい畳が
また新たな日々の
証言者として
部屋部屋に
敷き詰められていく
その家族の
個性に合わせて
なじんでいくのだろう
家族の成長は
畳の風格でもある
畳は癒しの和風カウンセラーだ