夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

心の置き場

2007-09-11 08:32:17 | つれづれなるままに
 朝方からY子さん(24歳)が荒れている。事務室の扉の軟質ガラスを蹴飛ばし、自傷行為の顔叩きと、彼女の関心を寄せるスタッフに詰め寄ろうとするのを他のスタッフが押し止めている。先日も宿泊棟のトイレの便器とストーブを破壊して、母親は悲嘆に暮れた。
 
 プラダーウイリー症候群※(資料)プラダーウィリー症候群(以下PWSと表記する)は、新生児期の筋緊張低下および、哺乳障害、幼児期からの過食と肥満、発達遅延、低身長、性腺機能不全などを特徴とする症候群です。発生頻度は10,000人ないし、15,000人に1人と考えられています。
 過食はPWSの主要な症状で、その原因は満腹中枢の障害に起因すると推測されています。いくら食べても満足感がなく、常に空腹状態で、しばしば盗食が見られます。
基礎代謝が低く、運動能力も低いことから、体重は増加の一途をたどり、20歳頃から糖尿病になる確率が高くなります。
過度の肥満は睡眠時の無呼吸や、高血圧、動脈硬化等の症状も引き起こします。PWSは年齢とともに病像が変化するのも特徴の一つです。幼児期は人なつっこくてかわいいのですが、次第に執拗さ、頑固さ、こだわりや思い込みが強くなり、周囲とのトラブルが多くなります。かんしゃく等の感情の爆発や、放浪癖がみられることもあり、性格や行動の問題が年齢とともに強くなります。皮膚を引っ掻くのもよくみられる症状です。うつ病や神経症などの精神障害をきたし、薬物療法を受けている例もあります。
※PWSの症状として、事実を記載しており、初めて訪れた方は、驚かれるかもしれませんが、年長のお子さんをお持ちの会員は、非常に苦しんでおられます。
その現状を、医療機関や行政の方にも知っていただきたいという意味がこめられています。
 PWSには一定の傾向はみられますが、それにそれぞれの個性が加わり理解を難しいものにしています。

1999年6月30日発行の教育医事新聞で、小児科医として長年多くのPWS児の診療にあたってこられた原田徳蔵氏は、PWSに関して次のように述べておられます。

「この病気だけは、医療関係者だけで対処できるものではありません。家族を含めて、学校の先生、地域の人、福祉関係の人など、子どもが一生の中で接する、あらゆる人たちの協力なしにはやっていけないと思います。これからは、小児科医や内科医、精神科医、看護師、栄養士、養護教諭など、いろいろな分野の専門家が、PWSを理解し、協力しないといけないでしょう。」と。

 理解が難しいPWS児を、生涯にわたって見守り支援していただける医療体制や、ケアする側の連携やネットワークが構築されることを願ってやみません。

 彼女の外観上の問題だけではなく、上記に概要説明のあるとおりの症状が確実に進行し、その発露の場が唯一の心を寄せられる優しいスタッフなのだろうと思う。
 先日母親と時間を費やしてお話をした。今まで母親は施設入所を渋っていた。しかし、もはや母親も限界点に達しているのは明白だった。Y子さんの健康といのちを守るための手立ては早急にしなければならない。そのためには、まず食生活管理と内科医並びに精神科医の関与が求められるだろう。彼女の頼れる社会資源はどこにあるのかを、これから母親とともに探す必要が生じている。
 わたしはまず、同じ症状の子どもを持つ親の会が参考になるのではないかと思うし、母親に紹介したいと思っている。