鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

文繋透図鍔 Tsuba

2018-09-06 | 鍔の歴史
文繋透図鍔


文繋透図鍔 
 
 賑やかな鐔面である。御幣に洲浜、扇、独鈷、数珠、蕨手、雁金など。八方に意匠しているところに古典の意識がある。八は全宇宙を意味する。普通は天地左右を対称に構成することが多く、簡潔な美観とは異なって、こうしてみるとこれも面白い。

影蝶透図鍔 甲冑師 Kachushi Tsuba

2018-09-05 | 鍔の歴史
影蝶透図鍔 甲冑師


影蝶透図鍔 甲冑師

 影蝶と記したが、繭玉の方が良いのではないかと考えている、どうだろう。近世では正月飾にも用いられる繭玉は、その中から蛾が生まれてくる、即ち生命の発生を想わせる存在。それが繰り返されることの意味は、必ず訪れる正月、一年の始まり、永遠に栄えることを願った図柄ではないだろうか。この鐔は土手耳仕立てとされている。面白いことに、実はこの耳には唐草文が施されていた痕跡がある。次に紹介する線象嵌が施された平安城象嵌鐔と極めて近似していると思う。もちろん装飾の濃密さは比較にならないが。このような作例があることにより、次の鐔が大きな意味を持ってくる。35□




雷文図鍔 平安城象嵌

 下地は甲冑師の造り込み。鉄味も優れている。そこに角渦巻き文と耳に菊花文の線象嵌を加えたものであろう。工作は室町時代を下らない。平安城象嵌鐔の始まりである。前回紹介した、土手耳部分に唐草文の痕跡があると説明したが、即ち、この鐔の前段階に当たるのか、或いはこのような装飾が、室町時代の一時期に流行したのであろうか。以上二点は、装剣小道具の歴史を探る上で頗る興味深い作例である。26□

猪目透図鍔 甲冑師 Kachushi Tsuba

2018-09-04 | 鍔の歴史
猪目透図鍔 甲冑師


猪目透図鍔 甲冑師

 六方に鋭く突き入る剣先を想わせる要素を生み出している円弧に、猪目の組み合わせ。これも優れた意匠だ。簡素というわけではないが、端正ですっきりとした、優れた平面構成である。こうして眺めると、ほんとにハートだよね。

括猿透図鍔 明珎 Myochin Tsuba

2018-09-04 | 鍔の歴史
括猿透図鍔 明珎


括猿透図鍔 明珎

 江戸時代の甲冑師、明珎派の作。四方に葵葉の延びるような意匠として、その一部に括猿がある。もっと時代の上がるようにも感じられる。江戸時代の甲冑師という意味合いで価格が上がらないのであろうか、決して古甲冑師に負けていない貫禄と鉄の魅力がある。とにかく意匠が優れている。10□

括猿に猪目透図鍔 甲冑師 Kachushi Tsuba

2018-09-01 | 鍔の歴史
括猿に猪目透図鍔 甲冑師


括猿に猪目透図鍔 甲冑師

 幾度か括猿については説明しているが、実を言うと筆者は納得していない。とはいうものの、なんだか判らない文様の一つで、多くの方々が感じているように答えを出せずにいる図柄である。猪目は、様々な曲線を組み合わせると、必ずハート形が生まれる。いずれも簡潔な文様ながら、なんとなく呪術的な意味合いを秘めているようで、興味深い。