鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

金剛王図鐔 東雨 Tou Tsuba

2018-10-03 | 鍔の歴史
金剛王図鐔 東雨


金剛王図鐔 東雨

 奈良派の知名度をより高めたのが安親、後の東雨である。装剣小道具での金剛は、仏を守る金剛力士のように阿吽の相を示す一対の仁王像の図で知られている。仁王像をそのまま彫刻した作もあるが、安親は、存在感のある文字で表現している。鉄地に文字のみが高彫。背景が石目地処理され、所々に抑揚のある浅い鋤彫を加えており、大空に金剛王が浮かび、下界を見下ろしているかのような、強い存在感がある。安親は写実的作風から伝統的な文様、人物の細密描写はもちろん雄大な山水図迄多彩な画題を手掛けている。活人剣のように文字を彫り描いた作もある。単純で簡潔な作だが、見どころが多く奥深い意味を宿している。掌中で鑑賞すべき作品の一つであろう。