鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

瓦に桜図鍔 後藤光久 Mitsuhisa Tsuba

2015-10-23 | 鍔の歴史
瓦に桜図鍔 後藤光久


瓦に桜図鍔 後藤光久

 打ち捨てられた瓦に散り掛かる桜。頗る印象的な場面である。そしてまた黒化した銀の桜が、墨染の桜を暗示して面白いが、ここでの桜は、遠い平安の世の雅を想わせる素材。桜の周りに配された金により、この鍔が製作された幕末から明治頃の京都に住む人々の、不安と遠い昔の世への思慕が強く浮かび上がってくる。名品である。さてこのような耳の仕立てを打ち返し耳と呼んでいる。あたかも耳の周囲を叩いて肉高く仕立てたかのような印象があるも、丁寧な鋤彫による描法とみて良いだろう。鍔の画面をおぼろに浮かび上がらせる効果がみられる。