鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図鍔 美濃 Mino Tsuba

2015-10-15 | 鍔の歴史
秋草図鍔 美濃


秋草図鍔 美濃

 美濃彫り様式の鍔は幾度か紹介してきた。桃山時代以前の古い作は、地を深く鋤き下げることにより耳を高く文様を高く彫り出し、それらの表面には高彫と色絵を加えて華やかに表現するを特徴としている。この流れは江戸時代に至って美濃金工により同時代性のある作風が示されるが、また一方で美濃彫りの影響を受けながらも深彫様式から離れ、より繊細緻密な作風へと進化し、広く流行した。写真の鍔が後者の例。この鍔では、耳が特に意識されている。密集した秋草図だが、耳から鍔の内側に枝が伸びているのだ。鍔の下にはこれが花束であることも意味している要素がみられる。似た作風で、草叢に寝そべって空を見上げているような図柄もある。いずれも耳から内側に枝や花が繁っている。なんて素敵なんだろう。耳を意識していることを通じ、改めて鍔という装剣小道具の面白さに気付かされる。□