鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

山水図鍔 長州貞次 Sadatsugu Tsuba

2015-09-02 | 鍔の歴史
山水図鍔 長州貞次


山水図鍔 長州有田源右衛門貞次 

 「打返耳」という技法を取り入れて水辺の風景を絵画風に表現した作。古くは桃山時代の埋忠派にある。この耳際の構成をどのように捉えたら良いのだろうか。何か別の絵画、例えば屏風絵や襖絵などの一部を破りとったような、古画の存在を意識させよう。題材もなんとなく古いもののように見え、地金も素銅という古寂な風合いの和紙を想わせる。また、打返耳とは言うものの、はたして本当に鎚などで打ち返したものであろうか。確かに作品によっては、耳際に皺が生じているものがあり、叩いたであろうと考えられるも、中には彫り込んで抑揚をつけた作例もある。装飾効果はどちらも同じようなものであり、どちらが優れているとか言うつもりはない。絵画としては、この耳の存在が重要であることに気付くだろう。明らかにこの手法が活きている。