鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

枯木象嵌図鍔 林 Hayashi Tsuba

2014-11-29 | 鍔の歴史
枯木象嵌図鍔 林


枯木象嵌図鍔 林

 肥後林派の布目象嵌による装飾。松樹などに施し、枯木や枝を這う蔓草の枯葉を想わせることから、特に枯木象嵌と呼んでいる。侘び茶に通じる美意識である。布目象嵌という剥落し易い技法を用いている点が面白い。即ち、使用の過程で必ず剥落することが分かっているからで、その剥落した様子をも美観として捉えてしまおうという意図である。これが破れ扇図と関わりがあるところ。鉄地の肌合いとの調和も魅力である。単に布目象嵌を配して絵を描いているだけではないのだ、地鉄との微妙な調和を求めた結果の美観である。この鍔では枝垂桜や柳などの冬枯れした様子を捉えているのであろう、素敵な平面美が生み出されている。