鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

双龍図鍔 南蛮 Nanban Tsuba

2014-11-27 | 鍔の歴史
双龍図鍔 南蛮


双龍図鍔 南蛮

 鉄地に金や銀を擦り付けることによって金の装飾を施した例である。布目象嵌象嵌の一種で、擦り付け象嵌と呼んでいる。鑢目に擦り込まれた金銀の表情が面白い景色を生み出している。図柄は異風な龍神を巴状に構成したもので、いかにも南蛮風。地を網のような唐草文としているのも南蛮鍔の特徴。南蛮鍔とは言うも、古くは南蛮とは中国の権力者にとっての中央から見た南の地域に住む野蛮人といった意味であったが、西洋文化が海上交通の発達と共に南周りで到来したことから、西洋文化全般を、その南蛮という経路から南蛮文化と呼んでいる。ただし、鍔については西洋の鍔ではなく、南蛮風鍔といった意味合いであり、実際の製作は室町時代から江戸時代を通じて日本各地で行われていた。もちろん西洋に開かれていた長崎を中心とする九州北部が最も盛んであった。だが、実際に遺されている南蛮鍔の多さから、江戸時代には南蛮鍔の大流行があったと考えられる。確かに南蛮鍔は意匠としても面白い。奇妙なる意匠を好んだのも江戸時代の風流に違いない。