鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

山水図鍔 有田原右衛門貞次 Sadatsugu Tsuba

2014-11-21 | 鍔の歴史
山水図鍔 有田原右衛門貞次


山水図鍔 長州萩住有田原右衛門貞次

 埋忠明壽との関連が考察されている光忠の鍔に似た表現とされた、長州鍔工の作例。水辺の風景と大空の雁であろうか、山水図としては比較的ポピュラーな題材。素銅地に金銀布目象嵌と毛彫のみで描いている。素敵な風景画である。耳を打ち返して地面に抑揚を付けているために時を重ねて地の色合いに変化が生じている。素銅地の色合いをこのように変質させて画面に活かし、夕景としている。剥落して擦れたような景色も、布目象嵌の特質である。剥落しても美しいのが布目象嵌である。この作例からも、埋忠派が長州に移住している、あるいは長州鍔工が埋忠に学んだことを証している。