鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

秋草図鍔 古金工 Kokinko Tsuba

2014-07-29 | 鍔の歴史
秋草図鍔 古金工


秋草図鍔 古金工

 露象嵌の処理が良く分る作品である。また、様々な処理技術が加えられている面白い標本でもある。耳を高くした木瓜形で、太刀様式だが、図柄の方向から打刀に用いられたものであることが判る。赤味の強い赤銅地に古拙な魚子地、高彫に金銀の色絵だが、色絵は薄い金銀の板を図柄に被せるという手法。被せた部分を金属などで接着したものが色絵。これと似ているが、被せた金属の端部を留める手法をうっとり色絵と呼ぶ。ここで採られている手法は、色絵の金属が破れている部分を観察するとうっとり色絵のようにも見えるし、破れの一部が下地と接着しているように見える部分もあり、技術的にも面白い作である。叩き込んだ露象嵌の端部にはみ出した金属が窺え、処理の過程が想像される。時代の上がる作であるにも関わらず、露象嵌の脱落が少ないのが不思議だ。裏の切羽台のすぐ上に一箇所抜けた痕跡があるのだが、比較的浅い処理であることが判る。露の球を打ち込んだ後に、その周囲を再度打ち込むという複式の処理をしているためであろうか、たいへんに興味深い。71ミリ。