鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

阿倍仲麻呂図鐔 奈良重治 Shigeharu Tsuba

2012-12-13 | 
阿倍仲麻呂図鐔 奈良重治


1阿倍仲麻呂図鐔 銘 奈良重治

 月の存在感は、絵画的にはかなり重い。離れ離れになった我が子を思う父が、わが子もまた同じ月を見ていることであろうと、月に自らの思いを重ねるのだが、それは物語。月は一方的に誰の頭上をも照らす。即ち、父→月←我が子ではなく、父→月→我が子という方向性があるわけで、思いは一方的なもの。その例と言うわけではないが、遣唐使の一人として留学した安倍仲麻呂は、行く度かの帰国の機会を逃し、ついに日本に戻ることができなかった。その強い思いを図としたのが写真例。月を見上げる唐人姿の人物図として描かれる。1は奈良派の重治、鉄地高彫金銀象嵌、2は無銘で朧銀地高彫金銀赤銅素銅色絵。




記事を更新しました
《装剣小道具の世界 バックナンバーから》
これまで十年以上、古美術雑誌『目の眼』において《装剣小道具の世界》と題して連載ページをいただき、刀剣に関わる金工芸術の魅力を紹介してきましたが、雑誌の内容を大きく変更する方針となり、連載が休止となりました。今後は、Web上にて同様に装剣金工作品の魅力を伝えてゆくつもりでおります。これまでは月刊雑誌という点から制約がありましたので、月一という紹介でしたが、今後は、掲載日を定めずに紹介して行く予定です。同様に、売品については価格を記載できなかったものを、Web上では価格表記も可能になりましたので、お求めをお考えの方にとっては、コレクションに直接つながる楽しみもあろうかと思います。このブログ同様に楽しんでいただければ幸いと考えております。