鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

節季候図小柄 秀鏡 Hideaki Kozuka

2012-12-03 | 小柄
日本東都市中年中行事図十二ヶ月揃小柄 塚田秀鏡


日本東都市中年中行事図十二ヶ月揃小柄 塚田秀鏡作から
十二月 節季候図

 我が国の宗教は多彩である。古い自然神への信仰は太陽信仰即ち天照大神信仰として現代でも受け継がれている。山岳信仰も修験道と関連して深く根付いている。装剣小道具には比較的多い古代中国に興った神仙の教えに基づく信仰もあり、江戸時代は七福神思想として広まった。仏教はもちろん、儒教の教えもある。室町時代には西洋から新宗教が入り、江戸時代には表向き禁止された。人は何かに頼ることによって生きることを潤滑にしようとする。それが信仰の対象。ところが、信仰対象とそれを媒介することを専門とする宗教人との間に、さらにもう一つ媒介する者があった。例えば冷たい海中に入ってする水垢離や瀧の水を受けることを代わって行う「代垢離」である。願人坊主と呼ばれる得体の知れぬ輩も、各家を廻り、いくらかの金銭で遠地にある信仰対称へ代参を請け負う。そんな意味では、お札などは、手軽な信仰対称の代用品であったのかもしれない。この小柄に描かれている「節季候(せきぞろ)」と呼ばれた輩もその一つ。殊に年末に見かける風俗であった。
 小柄の作者は江戸最末期から明治時代の人物。この作例のように、朧銀地に金銀赤銅素銅の平象嵌と片切彫を得意とした。一宮長常などの片切彫平象嵌を得意とした名工に比較し、図柄も処方も新鮮味が感じられる。素銅を用いていろところも新しい。


これまで十年以上、古美術雑誌『目の眼』において《装剣小道具の世界》と題して連載ページをいただき、刀剣に関わる金工芸術の魅力を紹介してきましたが、雑誌の内容を大きく変更する方針となり、連載が休止となりました。今後は、Web上にて同様に装剣金工作品の魅力を伝えてゆくつもりでおります。これまでは月刊雑誌という点から制約がありましたので、月一という紹介でしたが、今後は、掲載日を定めずに紹介して行く予定です。同様に、売品については価格を記載できなかったものを、Web上では価格表記も可能になりましたので、お求めをお考えの方にとっては、コレクションに直接つながる楽しみもあろうかと思います。このブログ同様に楽しんでいただければ幸いと考えております。

《鐔 Tsubu 装剣小道具の世界から》